マクデブルクのメヒティルト

メヒティルト（Mechthild von Magdeburg）

メヒティルトは、1207年頃に生まれ、1282年頃に亡くなったドイツのキリスト教神秘思想家であり、最も著名な著作は『神性の流れる光』です。彼女は、スピリチュアルな視点から深く考察し、中低ドイツ語で著作を行ったため、当時の文学の中では異色の存在でした。彼女の人生の大部分は一人での探求に捧げられましたが、晩年はヘルフタの修道院で過ごしました。

生涯

メヒティルトに関する詳細な歴史記録は少なく、その存在や活動に関する情報は主に彼女自身の著作から得られています。彼女はザクセンの名門に生まれ、12歳で初めて聖霊の幻視を経験したとされています。その後、1219年には「神の呼び声」を受け取り、これが彼女の人生を決定づける出来事となりました。この経験を経て、彼女は20歳の時に全てを捨て去り、神に奉仕する道を選びました。

その後彼女はマクデブルクに移り、約40年間にわたりベギンとして生活しました。ベギンたちの中で指導적인役割を果たし、ドミニコ会とも関わりを持つようになりました。彼女は神学的見解や修道者たちの怠慢に対して批判的であり、これが原因で彼女は多くの反発を受けました。年齢と共に健康が次第に衰え、視力も失っていきましたが、1272年にはヘルフタの修道院に迎え入れられ、晩年を過ごしました。この修道院は彼女を保護し、彼女の神秘的な啓示についての著作を支援しました。

メヒティルトの死に関しては詳細が不明で、1282年頃に亡くなったとされる一方で、1290年代まで生きたとする説も存在します。彼女は修道院内に埋葬されたと言われていますが、具体的な墓所は特定されていません。

著作

彼女の著作活動は、1250年頃から始まりました。聴罪司祭であり、霊的な指導者でもあったドミニコ会士ハインリヒ・フォン・ハレの指導のもと、彼女は『神性の流れる光』という7冊の書籍を執筆しました。最初の5冊は1260年頃までに書かれ、その後の10年間で第6冊が完成しました。1272年にヘルフタの修道院に加わった後、彼女は第7冊を執筆しました。この著作は彼女の神体験を凝縮した内容であり、メヒティルトの思想の根幹を形成しています。彼女の作品は長い間忘れ去られていましたが、19世紀に再び注目を集め、学術的な研究の対象となりました。

思想

メヒティルトの思想の中心にあるキーワードは「身体」です。彼女は身体を三つの段階で考察しました。第一の段階では、身体は魂が神と交わることを妨げる障害と見なされますが、同時に無意味な禁欲的な苦行に走ることはありません。第二の段階では、身体の存在はキリストの降下を象徴するものであり、その重要性を持ちます。最後の第三の段階では、身体を通じてキリストの受難を体験し、肉体が罪から解放されることに寄与することを示します。彼女は神との関係を花嫁と花婿の関係に例えて表現し、これが時にエロチックと見なされることもありました。

日本語訳書

• - 植田兼義訳『神性の流れる光』（『キリスト教神秘主義著作集』第4巻Ⅰに収録）、教文館、1996年
• - 香田芳樹訳『神性の流れる光』、創文社、1999年

メヒティルトの神秘主義的思想は、今日でも多くの人々に影響を与え続けています。彼女の著作は、ドイツ神秘主義の重要な一環を成し、文学や宗教思想の研究において欠かせない存在となっています。

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