マクラーレン・アルトゥーラ

マクラーレン アルトゥーラ：量産型ハイブリッドスーパーカーの挑戦と挫折

マクラーレン・オートモーティブが2021年に発表したアルトゥーラは、同社初の量産型プラグインハイブリッドスーパーカーとして大きな注目を集めました。これは、2018年に発表された長期ビジョン「TRACK25」計画に基づき、2025年までに全モデルのハイブリッド化を目指す取り組みの一環として開発されました。

アルトゥーラの開発には、新たなハイブリッド専用プラットフォーム「マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー（MCLA）」が採用されています。このプラットフォームは、イギリス・シェフィールドにあるマクラーレン・コンポジット・テクノロジーセンターで生産され、軽量化と高剛性を実現しました。アルトゥーラは、570Sの後継モデルとして位置づけられており、限定車であるP1を除けば、マクラーレン初の量産ハイブリッドカーとなります。

パワートレインは、新設計の3.0L V型6気筒ツインターボエンジン「M630」と、アキシャル・フラックスEモーターの組み合わせです。V6エンジンはバンク角を120度に設定し、その上にターボチャージャーを配置するホットVレイアウトを採用。このレイアウトは、市販車に搭載されたV6エンジンとしては世界初となります。

エンジン単体で最高出力585PS、最大トルク585Nmを発揮するM630は、従来のマクラーレン製V8エンジンと比較して約50kgの軽量化を実現しています。これに95PS/225NmのEモーターが加わることで、システム全体での最高出力は680PS、最大トルクは720Nmに達します。モーターのみでの走行も可能で、最高速度は130km/hに達します。

トランスミッションには、新開発の8速DCTが採用されています。これは、後進ギアを持たない設計で、後進時にはEモーターを逆回転させる仕組みとなっています。この設計により、ギアボックスの小型化（従来比40mm短縮）が実現しています。

アルトゥーラの駆動方式はMR（ミッドシップ・リアドライブ）です。ホンダNSXやフェラーリSF90ストラダーレといった競合車種では、フロントアクスルにもモーターを配置したAWDを採用していますが、アルトゥーラは軽量化のため、モーターをリアにのみ配置しています。7.4kWhのリチウムイオンバッテリーは、車体後部下部に搭載されており、外部充電にも対応します。充電時間は約2.5時間で80％、EV走行可能距離は約30kmです。

パフォーマンスに関しても、アルトゥーラは0-100km/h加速2.9秒、0-200km/h加速8.3秒、最高速度330km/hを誇り、0-400m加速は10.7秒という驚異的な数値を記録しています。

しかし、発売当初から生産上の問題が続出し、販売は何度も延期されました。2022年末には、致命的な欠陥が見つかり全車両の再生産が決定、日本市場への導入は事実上無期延期となりました。2023年には、エンジン低圧燃料ホースの不備を理由としたリコールも発生しています。技術的な完成度は高く評価されたものの、生産上のトラブルが、この革新的なスーパーカーの市場での成功を阻む大きな要因となってしまいました。 アルトゥーラは、ハイブリッド技術の先駆けとして、そして、その成功と挫折を同時に物語る一台として、自動車史に記録されることになるでしょう。

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