マクラーレン・MCL34

マクラーレンMCL34：2019年シーズンの躍進

2019年、マクラーレンはF1世界選手権にMCL34という新たなマシンで挑みました。このマシンは、従来のマクラーレン独自の設計思想から脱却し、最新のトレンドを積極的に取り入れた点が大きな特徴です。サイドポッドは絞り込まれ、レッドブルのようなエンジンカバーデザインを採用。ルノーのような大型インダクションボックスやスラット型ウイングも装備されました。一方で、マクラーレンの特徴的な豚鼻ノーズは踏襲しつつも、メルセデスのように小型化されています。さらに、フロントサスペンションアームのアップライト側ピボットには、ハイマウントブラケットが設置されました。

カラーリングは、前年モデルと同様にパパイヤオレンジがベースカラーですが、青色のアクセントがより広範囲に使用されています。これは、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ（BAT）とのパートナーシップ締結によるもので、「A Better Tomorrow」という同社のロゴが車体に掲載されました。ただし、たばこ広告規制の厳しい国では、セブン-イレブンやファミリーマートのロゴが代わりに使用されました。

燃料供給に関しては、ペトロブラスとの契約締結を発表していたものの、準備の遅れにより開幕には間に合わず、前年同様BP/カストロールを使用せざるを得ませんでした。最終的にはシーズン中にペトロブラスとの契約は解消されることになります。

2019年シーズンの戦績

ドライバーは、カルロス・サインツJr.（ルノーから移籍）とランド・ノリス（リザーブドライバーから昇格）のコンビ。シーズン途中には、ジェームス・キー（テクニカルディレクターとしてトロ・ロッソから移籍）やアンドレアス・ザイドル（チーム代表としてポルシェから移籍）といった新たな人材も加わりました。

プレシーズンテストでは暫定トップタイムを記録し、好調なスタートを切りました。シーズン開幕戦オーストラリアGPではノリスが予選Q3に進出。第2戦バーレーンGPでは両ドライバーが予選Q3に進出し、ノリスは決勝で6位入賞を果たし、自身とチームにとって今シーズンの初入賞となりました。その後も、アゼルバイジャンGPでのダブル入賞やフランスGPでの好成績など、前年とは比較にならないほどの躍進を遂げました。

マシントラブルによるリタイアもありましたが、予選Q3進出回数の増加や、ハンガリーGPでのレッドブルのピエール・ガスリーとの接戦勝利など、着実に戦闘力を向上させていることが証明されました。シーズン前半だけで、前年のポイントと入賞数を上回りました。ロシアGPでのダブル入賞により、コンストラクターズポイントは2014年以来となる100ポイントを超えました。

日本のF1専門家、松浦孝亮氏もMCL34の走行性能を高く評価しており、マシンの戦闘力向上には、パット・フライとアンドレア・ステラによる設計プロセスの改善が大きく寄与したとチーム代表ザイドルは分析しています。

しかし、ドライバーたちは決勝レースのペースに課題が残っていることを認識しており、油断せずにシーズンを戦い抜きました。ブラジルGPでは、サインツがPUトラブルにより最後尾からのスタートとなりましたが、見事な追い上げで4位を獲得。ハミルトンのペナルティにより3位に繰り上がり、自身初の表彰台、そしてチームにとっても2014年以来の表彰台獲得となりました。

最終的に、マクラーレンはコンストラクターズランキングで4位を獲得。これは2012年以来の好成績であり、ルノーワークスのエンジン供給というハンデを克服した成果といえます。しかし、タイヤレギュレーションの大幅変更などの影響もあり、この躍進が持続するかどうかは、翌シーズン以降の戦いで明らかになるでしょう。

特筆すべき点として、2019年シーズン、マクラーレンは唯一単独クラッシュを起こさなかったチームであり、ドライバーの安定性も非常に高かったことがわかります。

MCL34のスペック

MCL34は、カーボンファイバーコンポジット製のモノコックや、曙ブレーキ工業製のブレーキシステム、エンケイ製のホイールなど、数多くの高性能パーツを採用。ルノー製のE-Tech 19パワーユニットを搭載し、最高出力はレギュレーションで規定された範囲内です。詳細なスペックは、シャシー、パワーユニット、トランスミッション、記録などに分かれていますが、ここでは割愛させていただきます。

2019年シーズンは、マクラーレンの復活を予感させる、希望に満ちた年となりました。

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