マグダラで眠れ

『マグダラで眠れ』は、支倉凍砂による日本のライトノベル作品。イラストは鍋島テツヒロが担当し、電撃文庫から全8巻が刊行されました。支倉凍砂が『狼と香辛料』でデビュー後、新たに手掛けたシリーズであり、中世ヨーロッパ風の世界観を舞台に、錬金術師と修道女という異色の組み合わせの主人公たちが織りなす物語が展開されます。

あらすじ

物語の舞台は、教会、クラジウス騎士団、商工会の三つの勢力が拮抗する世界。錬金術師クースラは、聖人の骨を焼こうとした罪で投獄されますが、その才能を騎士団に見出され、前線近くの町グルベッティへ派遣されます。そこでクースラは、監視役として派遣された修道女ウル・フェネシスと出会います。

ダマスカス鋼の秘密を知るイリーネも仲間に加わり、クースラたちは騎士団と共に最前線へ。そこで『呪われた一族』の謎を解き明かすことになります。当初は騎士団の勝利が予想されていましたが、ラトリア国の改宗により世界は正教徒一色となり、戦争は終結。しかし直後、騎士団は奇襲を受け窮地に陥ります。クースラたちは騎士団を救い、その功績から騎士団に重用されるようになります。

財源と安全の代償として騎士団に所属することになったクースラたちは、『呪われた一族』の謎を解き明かすことに成功。同時に、『呪われた一族』が新天地へ旅立ったという驚愕の真実に辿り着きます。世界の真実を知ったクースラたちは、騎士団の許可を得て新たな旅へと出発します。

登場人物

クースラ: 本作の主人公。赤髪の錬金術師で、別名「眠らない錬金術師」。錬金術師としては常識的な青年だが、過去の出来事から心に影を抱えています。彼の「マグダラ」は幻の金属オリハルコンを錬成し、大切な女性を守ることです。
ウル・フェネシス: 本作のヒロイン。白髪緑眼の少女で、『呪われた一族』の生き残り。元は修道女で、クースラの監視役として派遣されます。理知的で真面目な性格ですが、年相応に未熟な面もあります。当初は錬金術師に偏見を持っていましたが、徐々にクースラに心を開き、自身も錬金術師となります。
ウェランド: 金髪で無精髭を生やした錬金術師。クースラとは兄弟弟子で、修道院長毒殺の罪で共にグルベッティに派遣されます。間延びした口調が特徴で、女性に人気があります。クースラとは互いに毒を盛り合う仲ですが、根は人間らしい人物です。
イリーネ・ブルナー: 赤髪の女性。元グルベッティ鍛冶屋組合頭領代理。さばさばした性格で、ダマスカス鋼を巡る騒動に巻き込まれます。偽ダマスカス鋼を作ることができる数少ない人物で、後にクースラたちの旅に同行します。

用語解説

教会: 教皇を頂点とする宗教組織。世界で最も巨大な権力を持つが、騎士団とは対立しています。信徒を増やす一方で、異端狩りも行っています。
クラジウス騎士団: 巨大な資金力と軍事力を持つ組織。教会とは対立しており、錬金術師に理解があるため、お抱えの錬金術師を多く抱えています。
商工会: 職人たちの組合。教会や騎士団には及ばないものの、一定の力を持っています。
錬金術師: 現代の科学者に相当する存在。冶金技術や採掘技術の向上に貢献しますが、世間からは魔女や悪魔憑きのような扱いを受けます。各々の錬金術師が目指す夢を「マグダラ」と呼びます。
* 異教: 教会や騎士団と対立する勢力。ラトリア国は「最後の異教徒が治める国」と呼ばれていました。

メディアミックス

本作は、有坂あこ作画によるコミカライズが『ヤングエース』で連載されました。また、過去を描いたスピンオフ作品『少女は書架の海で眠る』もコミカライズ、小説化されています。

評価

『マグダラで眠れ』は、中世ヨーロッパ風の世界観や魅力的なキャラクター、そして錬金術という要素を巧みに組み合わせたファンタジー作品として、多くの読者を魅了しました。第2回ラノベ好き書店員大賞では1位を獲得し、2015年10月時点でシリーズ累計43万部を記録しています。

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