マグヌス4世 (スウェーデン王)

マグヌス・エリクソン：二つの王冠を戴いた王

マグヌス・エリクソン（1316年 - 1374年）は、中世スカンディナヴィアにおいて特異な存在感を放つ人物です。彼はノルウェー王（マグヌス7世）とスウェーデン王（マグヌス4世）を兼ね、二つの王国の命運を一身に背負いました。その生涯は、政治的策謀、領土拡張への野望、そして社会変革の試みに彩られています。

生い立ちと即位

マグヌスは、スウェーデン王マグヌス3世の次男エリク・マグヌソンと、ノルウェー王ホーコン5世の娘インゲビョルグの間に生まれました。1319年、ホーコン5世が後継者を残さずに死去すると、わずか3歳だったマグヌスがノルウェー王位を継承します。同時に、スウェーデンでも貴族たちがマグヌスの伯父ビルイェルを追放し、マグヌスを王に迎えました。これにより、幼いマグヌスは二つの王国の王となりました。幼少のため、両国では摂政が置かれ、国政を代行しました。

親政と政策

1331年、マグヌスは親政を開始します。翌年には、当時デンマーク領であったスコーネとブレーキンゲをスウェーデン王として購入します。しかし、この購入はマグヌスにとって大きな財政負担となりました。既に領地が質入れされ、黒死病による農民の減少で税収が落ち込む中、マグヌスはスコーネの購入費用を捻出するため、農民への臨時税、関税の強化、貴族の免税特権の撤廃、教会への課税など、強硬な財政政策を打ち出しました。

また、マグヌスは若い騎士ベンクト・アルゴットソンを寵愛し、フィンランド公爵に叙任しました。これらの政策は、貴族層の反発を招き、1356年には貴族による反乱が勃発。翌年には、貴族たちはマグヌスの長男エリクをスウェーデン王に擁立しました。しかし、エリクは1359年に急死し、状況は再び混沌とします。一方、ノルウェー王位は1355年に次男ホーコンに譲られ、二つの王国間の同君連合は解消されました。

法整備と黒死病

政治的な混乱の一方で、マグヌスは1350年に地方法と都市法を制定しました。これらの法律は18世紀初頭まで維持され、後の社会に大きな影響を与えました。マグヌスの治世は、黒死病によって人口の約3分の1を失うまでは、比較的平和な時代であったとされています。この黒死病は、当時の社会構造に大きな変化をもたらし、マグヌスの政策にも影響を与えたと考えられます。

失脚と亡命

1364年、マグヌスはスウェーデン貴族によって追放され、ノルウェーへと亡命します。貴族たちは、マグヌスの甥であるメクレンブルク＝シュヴェリーン公アルブレヒト3世を新たなスウェーデン王として迎えました。こうして、マグヌスは二つの王位を失い、不遇のうちにその生涯を閉じました。

ビルギッタ会との関係

1346年、マグヌスと王妃は聖ビルギッタに寄付を行い、ヴァドステーナ修道院を設立しました。ビルギッタはここを拠点にビルギッタ会を創設し、修道院は王室の保護を受け発展しました。しかし、後にビルギッタはマグヌスの中央集権政策を批判するようになり、両者の関係は変化しました。

子女

マグヌスは1335年にナミュール侯ジャン1世の娘ブランカと結婚し、二人の息子をもうけました。

エリク12世（1339年 - 1359年）：スウェーデン共治王（在位：1357年 - 1359年）
ホーコン6世（1340年 - 1380年）：ノルウェー王（在位：1343年 - 1380年）

マグヌス・エリクソンは、その波乱に満ちた生涯を通じて、中世スカンディナヴィア史に大きな足跡を残しました。彼の治世は、王権と貴族の対立、黒死病による社会変革、そして宗教的影響など、当時の複雑な情勢を映し出す鏡と言えるでしょう。

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