マザーレス・ブルックリン (映画)

マザーレス・ブルックリン：1950年代ニューヨークの闇を描いた重厚なクライムサスペンス

『マザーレス・ブルックリン』は、2019年公開のアメリカ映画です。エドワード・ノートンが監督、脚本、製作、そして主演を務めた、重厚なクライムサスペンス作品と言えるでしょう。1999年に発表されたジョナサン・レセムの同名小説を原作としていますが、映画版では時代設定が1950年代のニューヨークに変更されています。

物語の舞台は、1957年のニューヨーク。孤児として育ったライオネル・エスログは、私立探偵であるフランク・ミナに引き取られ、探偵としての道を歩み始めます。ライオネルはトゥレット症候群を抱え、時折、不随意な言葉を口にしてしまうというハンデを負っていますが、並外れた記憶力を武器に、事件解決に挑みます。

ある日、恩人であるフランクが何者かによって殺害されます。この事件をきっかけに、ライオネルはフランクの死の真相を追うことになるのですが、事件の背後には、ニューヨークの深淵な闇が潜んでいることを知ることになります。手掛かりは少なく、捜査は難航しますが、ライオネルは決して諦めません。彼の執念の捜査は、やがて巨大な陰謀へと繋がっていくのです。

ノートン監督は、時代設定を原作小説の1999年から1950年代に変更した理由について、次のように説明しています。原作小説の登場人物たちが持つ雰囲気は、1950年代のハードボイルド小説の登場人物を彷彿とさせるものであり、現代の設定では浮いてしまうという懸念があったとのことです。さらに、1950年代半ばのニューヨークにおける組織ぐるみの腐敗やレイシズムへの関心が、時代設定変更の大きな理由だったとも語っています。これらの社会問題が、現代のニューヨーク社会のあり方にも影響を与えているという、監督の強い思いが込められていると言えるでしょう。

豪華キャスト陣も本作の魅力の一つです。ライオネル役のエドワード・ノートンをはじめ、フランク役のブルース・ウィリス、事件に深く関わる女性ローラ役を演じるググ・バサ＝ロー、地元の有力政治家モーゼス役のアレック・ボールドウィンなど、実力派俳優が多数出演しています。その他にも、ウィレム・デフォー、ボビー・カナヴェイル、チェリー・ジョーンズら、個性豊かな俳優たちが脇を固め、物語に深みを与えています。

映画の製作は2014年に開始されましたが、ノートン監督は2000年代初頭から映画化を計画していたとのことです。撮影期間中には、セットで火災が発生し、消防士が殉職するという悲しい事故も起きています。音楽はダニエル・ペンバートンが担当し、トム・ヨークが新曲を提供しています。

公開後、『マザーレス・ブルックリン』は批評家から好意的な評価を受けました。Rotten Tomatoesでは批評家支持率61%、Metacriticでは加重平均値60/100と、一定の評価を得ています。上映時間が長いという指摘もあるものの、独特の世界観と俳優陣の演技が高く評価されているようです。

『マザーレス・ブルックリン』は、1950年代ニューヨークの社会問題を背景に、トゥレット症候群を抱える私立探偵の葛藤と成長を描いた、見応えのあるクライムサスペンスです。時代考証の細やかさ、豪華なキャスト、そして重厚なストーリー展開は、観客を深く引き込みます。時代劇的な雰囲気と現代的なテーマが融合した、独特の魅力を持つ作品と言えるでしょう。

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