マシュー・ミッチャム

マシュー・ミッチャム：波乱万丈の飛込人生

マシュー・ミッチャム（Matthew Mitcham OAM 、1988年3月2日 - ）は、オーストラリアの男子飛込競技選手です。2008年北京オリンピックの10m高飛込みで、中国勢の完全制覇を阻止し、金メダルを獲得したことで一躍有名になりました。また、同性愛者であることを公表していることでも知られています。

トランポリンから飛込へ

ミッチャムは元々トランポリン選手でした。オーストラリアスポーツ研究所の飛び込みコーチ、王同祥に見出され、飛び込み競技を始めます。ブリスベン郊外のチャンドラー水泳競技センターで、飛び込みとトランポリンの両方を練習していました。

トランポリン選手としては、1999年と2001年の世界ジュニア選手権にオーストラリア代表として出場し、ダブルミニ競技で優勝。2003年のオーストラリア・ユースオリンピックでは6位入賞を果たしています。2002年から2004年の間は、数々のジュニア大会で優勝を飾るナショナルジュニアチャンピオンでした。

北京五輪での金メダル

2008年北京五輪では、3m板飛込みで準決勝敗退となりましたが、10m高飛込みでは決勝に進出。最初の5回の試技を終えて2位につけ、中国の周呂鑫との差は34ポイントでした。周が最終試技でミスをしたものの、ミッチャムが金メダルを獲得するには107.30点という高得点が必要でした。しかし、彼はほぼ完璧な演技を披露し、審判から4つの10点満点を獲得。112.10点という五輪史上最高の得点を記録し、合計537.95点で金メダルを獲得しました。この勝利により、中国の飛び込み競技全種目制覇の夢を打ち砕きました。

オーストラリア郵政は、彼のメダル獲得を記念して50セント切手を発行しています。

その後のキャリア

北京五輪後、2009年世界水泳選手権ローマ大会の10メートル高板飛び込みでは4位。2010年のコモンウェルスゲームズでは、イーサン・ワレンと共にシンクロナイズド競技の3mと10mに出場し、4つの銀メダルを獲得しました。

苦悩と再生

2012年に出版された自伝『Twists and Turns』で、2011年に非医療用メタンフェタミンを使用し、薬物依存に苦しんでいたことを告白しました。薬物使用の理由として、「低い自己評価」「不安」「抑うつ」「パニック症候群」を挙げています。ナルコティクス・アノニマス（NA）の支援を受け、薬物依存から回復しました。

オーストラリア五輪委員会は、ミッチャムの薬物使用について知らなかったと発表し、彼の回復と競技復帰を歓迎しました。

2012年ロンドン五輪では、10m高飛び込みで準決勝13位となり、決勝進出を逃しました。

私生活とスポンサー

ミッチャムは2008年にゲイであることを公表しました。北京五輪期間中には、ゲイ雑誌『The Advocate』の表紙を飾っています。ボーイフレンドのラクラン・フレッチナーは、北京五輪に観客として帯同しました。

飛び込み競技での実績にもかかわらず、スポンサー獲得には苦労しました。2009年にテルステラ社から経済的支援を受け、2010年3月には「ファンキー・トランクス」のスポークスマンに就任しています。

その他の活動

2009年には、ゲイ・アンド・レズビアン・マルディグラのパレードで旗手を務めました。また、リアリティ番組「Rexona Greatest Athlete Australia」に出演し、ベストアスリート賞を受賞しています。

ミッチャムは、スポーツ界における多様性とインクルージョンを推進する活動にも積極的に参加しています。

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