マスク (1985年の映画)

マスク：奇病と闘う少年の、愛と希望の物語

1985年公開のアメリカ映画『マスク（Mask）』は、2200万人に1人という稀な頭蓋骨幹異形成症（ライオン病）を患う少年、ロッキー・デニスの実話を基にした感動的なヒューマン・ドラマです。この映画は、容姿の異常に悩む少年と、彼を献身的に支える母親、そして彼を取り巻く人々との温かい絆を丁寧に描き出しています。

主人公ロッキーは、顔面が大きく変形した容姿のため、まるでライオンのマスクをかぶっているかのようでした。しかし、彼は明るく、知的好奇心旺盛な少年です。母親のフローレンス（ラスティ）は、型破りで自由奔放な女性ながらも、ロッキーへの深い愛情をもって彼を育ててきました。

物語は、1979年のアメリカを舞台に、中学3年生になったロッキーが、特殊教育学校への進学を勧められる場面から始まります。しかし、彼の母親は、ロッキーの知能や能力は通常の子どもたちと変わらないと主張し、公立中学校への転入を強く希望します。ロッキー自身も、自分の外見だけが「変」であると訴え、その強い意志で周囲を動かしていきます。

ロッキーは、成績優秀で、特に数学、科学、歴史が得意でした。彼は常に頭痛に悩まされており、生まれてから何度も「余命半年」を宣告されてきましたが、それを悲観することなく前向きに生きています。卒業式には、経済的な理由で出席できないことを知ったヒッピー仲間たちが、彼のためにスーツを贈るなど、周りの人々の温かい支えがロッキーを力づけていました。

しかし、母親のラスティは薬物依存に苦しんでおり、ロッキーは彼女を心配していました。その葛藤の中で、ロッキーは盲目の子供たちのためのサマーキャンプでボランティアとして働くことを決意します。そこで彼は、盲目の少女ダイアナと出会い、恋に落ちます。しかし、ダイアナの両親はロッキーの容姿を見て、娘との交流を拒否します。

ヨーロッパ旅行を夢見てお金を貯めていたロッキーでしたが、友人も引っ越し、夢は叶わずに終わろうとしていました。ある夜、激しい頭痛に襲われたロッキーは、眠るように息を引き取ります。翌朝、彼の死を知らされた母親ラスティの悲しみは深く、見る者を涙させます。

この映画は、容姿のハンディキャップを抱えながらも、周囲の人々の愛と支えの中でたくましく生きたロッキーの生涯を感動的に描いています。シェール演じる母親の複雑な心情や、ロッキーを取り巻く様々な人間模様も丁寧に描かれており、観る者に深い余韻を残す作品となっています。また、ロッキーの病気である頭蓋骨幹異形成症についても、映画の中で分かりやすく説明されており、病気への理解を深めるきっかけにもなります。

キャスト陣も豪華で、ロッキー役のエリック・ストルツ、母親役のシェールをはじめ、サム・エリオット、ローラ・ダーンなど、実力派俳優たちが素晴らしい演技を見せています。特に、シェールは、この役でカンヌ映画祭女優賞を受賞しています。

『マスク』は、容姿にとらわれず、内面の魅力を大切にすることの大切さを改めて考えさせてくれる、心に響く感動の物語です。一見、暗いテーマのようですが、温かい人間関係と、希望を捨てないロッキーの生き様は、観る者に勇気と感動を与えてくれます。

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