マスター (ドクター・フー)

ドクター・フーの宿敵：マスターの謎に迫る

イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』において、主人公であるドクターにとって最大の敵として君臨するのがマスターです。タイムロードであるドクターと同様に、並外れた知性と時間旅行能力を駆使し、度々宇宙の支配を企てる狡猾なヴィランとして描かれています。

マスターの変貌：複数の顔を持つタイムロード

1971年の初登場以来、マスターは数々の俳優によって演じられてきました。これは、マスターが他者の肉体を乗っ取ったり、タイムロード特有の再生能力（リジェネレート）によって姿を変えるためです。ロジャー・デルガードから始まり、ピーター・プラット、ジオフレイ・ビーバース、アンソニー・アインリー、エリック・ロバーツ、そして新シリーズではデレク・ジャコビ、ジョン・シムと、多彩な俳優陣がそれぞれの解釈でマスターを演じ分け、その魅力と恐ろしさを際立たせてきました。2014年には、ミシェル・ゴメス演じる初の女性マスター、ミッシーが登場し、新たな衝撃を与えました。さらに、オーディオドラマなどでは、アレックス・マックイーンやジェームズ・ドレフスなど、他の俳優もマスターを演じています。

マスターの起源：ドクターとの因縁

マスターのキャラクターは、プロデューサーのバリー・レッツと脚本家のテランス・ディックスによって考案されました。ドクターと同様にタイムロードであるマスターは、ドクターを凌駕する知性と野心を持つ存在として描かれています。当初からドクターに匹敵する、あるいはそれ以上の存在として構想されており、ドクターとの因縁はシリーズを通して重要な要素となっています。ロジャー・デルガードは、マスター役を演じるにあたり、悪役としての豊富なキャリアと、既に『ドクター・フー』に出演した経験を活かしました。

マスターの目的と性格：宇宙の支配者への野望

マスターの究極の目的は宇宙の支配です。権力欲とドクターへの敵意を併せ持ち、様々な策略を巡らせます。ドクターを苦しめることも、マスターの大きな喜びです。知性においてはドクターとほぼ互角であり、タイムロードアカデミー時代にはドクターよりも優秀な成績を収めていたという設定もあります。しかし、その性格は冷酷で自己中心的です。デルガード演じる初期のマスターは、洗練された魅力を漂わせるソシオパスとして描かれた一方、ジョン・シム演じるマスターは、ドクターと似た活発さとサイコパス的な側面を併せ持っていました。ミッシーは、そのサイコパス的な振る舞い、特にドクターへの異常な執着と冷酷な殺人行為、そして女性という新たなアイデンティティを通して、ドクターとマスターの複雑な関係性を鮮やかに表現しました。

マスターの能力：驚異的な精神力とテクノロジー

マスターは、ドクターと同様に催眠能力やテレパシー能力を持ち、その力はドクターを上回ると言われています。相手の行動を先読みし、巧妙な罠を仕掛け、ドクターを陥れることも得意です。また、マスターのターディスは、カメレオン回路によって様々な姿に変身することができ、その形状は馬車から宇宙船、さらには置時計など、多種多様です。ミッシーが登場するシリーズでは、時空操作機を用いてタイムトラベルを行い、巧みな策略でドクターを翻弄しました。

マスターの武器：独特な殺人兵器

マスターは、様々な武器を駆使して敵を倒します。初期には、対象を人形のように縮小させるTCE（tissue compression eliminator）を使用していました。後に登場したレーザー・スクリュードライバーは、強力なレーザー兵器として機能し、対象を老化させる機能も備えています。ミッシーは、小型の携帯デバイスや、傘に仕込まれたソニック／レーザーデバイスなどを用いて、敵を倒します。これらの武器は、マスターの狡猾さと冷酷さを象徴するものです。

マスターとコンパニオン：道具としての関係性

ドクターとは異なり、マスターはコンパニオンを伴って旅をすることはほとんどありません。例外的に、いくつかのエピソードでコンパニオンが登場しますが、彼らはあくまでもマスターの道具として扱われます。マスターはコンパニオンを利用して自身の目的を達成しようとしますが、最終的には裏切られたり、利用されたりするケースも多く見られます。ハロルド・サクソンとしての活動時には、ルーシー・サクソンと結婚していましたが、これは支配欲と策略に基づくものでした。

マスターの活躍：ドクターとの幾度もの対決

マスターは、シリーズを通して何度もドクターと対決してきました。ロジャー・デルガード演じるマスターは、ネスティーンやダーレク、シーデビルなど様々な敵と手を組み、地球侵略を企てました。ピーター・プラット、ジオフレイ・ビーバース、アンソニー・アインリー演じるマスターは、再生を繰り返しながら、自身の野望を追求し続けました。エリック・ロバーツ演じるマスターは、ダーレクによって処刑されるも、生き延びてドクターの前に再び立ちはだかりました。ジョン・シム演じるマスターは、ハロルド・サクソンという偽名を使い、地球征服を企てます。そして、ミッシーとして女性の姿で現れたマスターは、新たな策略とサイコパス的な振る舞いで、ドクターを苦しめました。

マスターの物語は続く：様々なメディアへの展開

マスターは、テレビシリーズだけでなく、オーディオドラマ、小説、コミックなど、様々なメディアに登場し、その物語は今もなお展開されています。それぞれのメディアで、異なる解釈や描写がなされており、マスターというキャラクターの多様性を示しています。ドクター・フーの世界観において、マスターは、ドクターにとって永遠の宿敵であり、そして、作品全体を彩る魅力的な存在として、今後も重要な役割を担い続けるでしょう。

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