マチルダII歩兵戦車

歩兵戦車Mk.II マチルダII

歩兵戦車Mk.II、通称マチルダIIは、イギリス軍が第二次世界大戦前期に使用した歩兵戦車です。重量は約30トンで、最大装甲厚は75mmにも達しました。1938年に初の量産が開始され、最終的には1943年までに2,890両が生産されました。ソビエト連邦にも供与され、戦況において重要な役割を果たしました。

開発の背景

この戦車の開発は1934年に始まり、当初は装甲の厚さや火力を重視して設計されました。低コストかつ短期間での開発が求められたため、初期の設計案は小型で性能が不十分とされ、より大型なA12の仕様が求められました。このモデルは「マチルダ・シニア」と呼ばれ、1938年に最初の生産発注が行われました。

性能と設計

マチルダIIの最大の特徴は、その厚い装甲にあります。装甲は圧延防弾鋼と鋳造鋼の組み合わせによって構成され、敵の徹甲弾に対する防御能力が高く評価されました。しかし、その生産過程は煩雑で、コストがかさむことが課題でもありました。

武装は主に2ポンド砲と同軸機銃が搭載されていますが、2ポンド砲に榴弾がほとんど支給されなかった事から、近接支援型として3インチ榴弾砲を搭載したバージョンも生産されました。また、ディーゼルエンジンの設計があり、整備が難しい一面を持ちながらも、エンジン不良時でも機能を保つ仕組みがありました。

戦歴と運用

マチルダIIは1940年のフランス侵攻戦で初めて本格的に運用され、その厚い装甲によってドイツの戦車に対して優位性を保ちました。特に北アフリカ戦線では、その性能を発揮し、イギリス機甲部隊の重要な戦力となりました。ここでは、ダズル迷彩も施され、敵からの攻撃を回避する工夫がされていました。

しかし、その運用においてはいくつかの欠点も露呈しました。特に装甲の優位性が薄れていき、敵の長砲身の砲に対抗できなくなり、速度の遅さや発展性の乏しさが影響しました。1942年には新型戦車に押される形で、実戦での存在感が薄れていくことになります。

他国での使用と評価

マチルダIIはソ連にも供与され、計1,084両が届けられましたが、その評価は賛否が分かれました。特に装甲の詰まりや火力不足が問題視され、戦車の脆弱性を指摘される場面もありました。ソ連では一部車両で武装の換装テストが行われるも、実用化には至りませんでした。

日本においても、フィンシュハーフェンの戦闘でオーストラリア軍がマチルダを使用し、高い防御能力を示しましたが、最終的には逐次的に新型戦車に置き換えられていきました。戦後も数台のマチルダが残存し、現在もオーストラリアの博物館に展示されるなどし、戦争の歴史の一部として語り継がれています。

形式と派生型

マチルダIIには、Mk.IからMk.Vまでさまざまなバリエーションが存在し、特に近接支援型や新型履帯を装備したモデルなどが開発されました。また、土木作業や地雷処理用の特別仕様車両も試作され、一部は戦闘に投入されました。

結論

マチルダIIは、その性能と歴史の中で重要な記録を残した戦車として、多くの戦場で活躍しました。彼女の特異なデザインと防御力は、戦術の変化とともに評価が揺れ動いたものの、今なお多くの歴史的な価値を有する存在です。

もう一度検索