マティルダ・オブ・イングランド

マティルダ・オブ・イングランド：激動の生涯を送った王女

マティルダ・オブ・イングランド（1156年 - 1189年6月28日）は、イングランド王ヘンリー2世とアリエノール・ダキテーヌの長女として生まれました。彼女は、ザクセン公兼バイエルン公ハインリヒ獅子公の妃となったことで知られています。マティルダはモード（Maud）とも呼ばれ、ドイツ語ではマティルデ・フォン・エングラント（Mathilde von England）と表記されます。

生い立ちと結婚

マティルダは、イングランド王家の有力な一員として、多くの兄弟姉妹と共に育ちました。異父姉にはマリーとアリックスがおり、同父母の兄弟には、兄にウィリアム、若ヘンリー王、弟にリチャード1世、ジェフリー、ジョン、妹にエレノアとジョーンがいました。1165年、マティルダはまだ幼いながらも、その将来を左右する縁談が持ち上がりました。ケルン大司教ダッセルとヘンリー2世の間で、ドイツ諸侯との縁組みが話し合われたのです。当初、マティルダは神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世の息子との結婚が検討されましたが、レスター伯の反対により実現には至りませんでした。しかし、1167年、ハインリヒ獅子公との結婚がまとまり、マティルダはドイツへと旅立ちました。この結婚は、ハインリヒがフリードリヒに対抗する上で強力な後ろ盾を得るという、政治的な意味合いも持っていました。

波乱の結婚生活

結婚後、マティルダはハインリヒ獅子公の領地で生活を送りました。1172年から2年間、夫が聖地へ向かった際には、広大な所領を統治するという重責を担いました。しかし、1174年に皇帝との対立が激化すると、夫妻は領地を追われることになり、1182年に父ヘンリー2世の宮廷があるノルマンディーへと亡命しました。この亡命生活の間、彼女は吟遊詩人ベルトラン・デ・ボルンによって「宮廷の愛」の詩の対象となり、「エレナ」「ラナ」と称えられました。1185年まで父の庇護を受けていましたが、その後ザクセンへ帰国しました。

死去と子供たち

マティルダは、父ヘンリー2世が死去した数週間後の1189年6月、ブラウンシュヴァイクで息を引き取りました。彼女の生涯は、政略結婚と亡命生活、そして夫の領地経営と、波乱に満ちたものでした。

彼女とハインリヒ獅子公の間には、以下の子供たちがいました。

マティルダ（リヒェンツァ）：ペルシュ伯ジョフロワ3世妃。
ハインリヒ5世：ライン宮中伯。
ローター
オットー：神聖ローマ皇帝およびシュヴァーベン大公。
* ヴィルヘルム：リューネブルク公。

マティルダの人生は、中世ヨーロッパの政治情勢と、王侯貴族の複雑な人間関係を映し出す鏡のようなものでした。彼女の存在は、歴史の中で重要な役割を果たし、後世に語り継がれています。

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