マティルダ・オブ・フランダース

マティルダ・オブ・フランダース：ノルマン征服の影で活躍した王妃

マティルダ・オブ・フランダース(1031年 - 1083年11月2日)は、イングランド王国の歴史において重要な役割を果たした人物です。彼女は、1066年のノルマン征服で知られるウィリアム1世の正妃として、その生涯を通じて夫を支え、後のイングランド王朝の礎を築きました。

王室の血を引く出自と波乱の結婚

マティルダは、フランドル伯ボードゥアン5世とフランス王ロベール2世の娘アデルの間に生まれました。高貴な血筋を持ち、父方の家系にはイングランド王アルフレッド大王の血も流れていました。しかし、ウィリアム1世との結婚は、当初は教会から異議を唱えられました。ウィリアム1世とマティルダは近親関係にあったためです。しかし、ローマ教皇ニコラウス2世からの特免状を得て、1053年に結婚が認められました。この結婚は、のちのノルマン朝イングランド王朝の安定に大きく貢献することになります。結婚の承認を祈願し、その償いとして、夫妻はカーンに修道院を寄進しました。

バイユー・タペストリーと王家の貢献

マティルダは、単なる王妃としてだけでなく、イングランドの歴史に名を残す数々の貢献をしました。中でも特筆すべきは、1066年のノルマン征服を詳細に描いたバイユー・タペストリーの発案です。このタペストリーは、歴史的史料としても芸術作品としても非常に貴重なもので、征服の過程や当時の様子を鮮やかに伝えてくれます。ウィリアム1世の軍事作戦や、征服の過程で起きた出来事が事細かに描かれていることから、マティルダの政治的洞察力と、歴史記録への関心の高さがうかがえます。バイユー・タペストリーは、マティルダの政治的な影響力と、歴史に対する深い理解を示す重要な証拠といえます。

多くの子供たちと王朝の繁栄

マティルダはウィリアム1世との間に、4人の息子と7人の娘をもうけました。その子供たちは、イングランド王朝の維持と発展に重要な役割を果たしました。息子のなかには、後のイングランド王となるウィリアム2世やヘンリー1世が含まれ、娘たちはヨーロッパの有力な貴族と結婚し、王室の政治的影響力を広げることに貢献しました。なかでもアデラはブロワ伯エティエンヌ2世と結婚し、後のイングランド王ステファンの母となりました。これは、マティルダの子供たちが王室のつながりを強化し、イングランド王朝の安定に大きく貢献したことを示しています。

晩年と遺産

1083年、マティルダは夫に先立ち52歳で亡くなりました。彼女は自身が寄進したカーンのサントトリニテ修道院に埋葬されました。彼女の死後、ウィリアム1世はさらに4年後、カーンに寄進したサントテティエンヌ修道院で生涯を終えました。マティルダは、単なる王室の妻という立場を超え、政治的影響力や文化活動を通じ、イングランドの歴史に大きな足跡を残しました。彼女は、夫ウィリアム1世と共にノルマン朝イングランド王朝の礎を築き、その後の王朝の発展に貢献した、非常に重要な人物だったのです。

系図

（系図は図表などで表現することを推奨します。）

参考文献

* 森護 『英国王室史話』 大修館書店、1986年

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