マティルド (小惑星)

小惑星マティルド (253 Mathilde)

小惑星マティルドは、小惑星帯に位置する特徴的な小惑星で、1885年11月12日にウィーンで天文学者ヨハン・パリサによって発見されました。発見当初から多くの研究者に注目され、パリ天文台のV. A. Lebeufによって命名されたこの小惑星は、彼の同僚で、パリ天文台の副台長を務めていたモーリス・ローイの妻の名に由来しています。

観測と特性

1997年には、NASAの探査機「NEAR」が(433)エロスへ向かう途中でマティルドを観測しました。この小惑星はC型小惑星に分類され、炭素質コンドライトと同じ組成で構成されていると考えられています。しかし、NEARによる計測によると、その密度は1,300 kg/m³と、コンドライトの半分以下です。このことは、マティルドが「ラブルパイル（小石の山）」である可能性を示唆しています。この特性は、他の多くの小惑星でも観察されており、特に(45)ウージェニアや(90)アンティオペ、(87)シルヴィア、(121)ヘルミオネなどでも見られます。

NEARによる近赤外分光観測では、マティルドの表面にフィロケイ酸塩が認められ、これは水質変成作用を示すもので、CI1またはCM2コンドライトに類似しています。これにより、マティルドが過去に水分の存在する環境で形成された可能性が考えられています。

クレーターの特徴

マティルドの表面には、いくつかの大きなクレーターが存在します。特に注目されるのはKarooクレーター（直径33.4 km）とIshikariクレーター（29.3 km）で、これらは小惑星の平均半径を超えるサイズです。これらのクレーターが表面の色や明るさに大きな変化をもたらしていないことから、マティルドは内部が一様な物質で構成されていると考えられています。

マティルドは、非常に小規模な小惑星族の代表として認識されており、この族の小惑星は離心率の高い楕円軌道を描いており、メインベルトの外縁部にまで及んでいます。

自転速度と衛星

この小惑星は、自転速度が非常に遅いことでも知られています。自転周期が17日というのは、他の小惑星に比べて非常に長く、そのためNEAR探査機は表面全体を撮影することができず、撮影された画像は表面の約60％しかカバーできません。このような遅い自転は、衛星の存在によって説明されることがありますが、NEARによる観測では、半径20倍以内に直径10 km以上の衛星は発見されていません。

クレーターの命名

マティルドのクレーター名称は、地球上の炭田や炭鉱に由来することが定められており、日本の地名である「Ishikari」（石狩）もその一例です。これは、マティルドが炭素化合物を多く含むC型小惑星であることを反映した命名方法です。

まとめ

小惑星マティルドは、科学者にとって興味深い研究対象であり、その独特な性質や過去の水条件、さらにクレーターの特徴から、今後の研究が楽しみな天体です。今後の探査や観測によって、新しい知見が得られることが期待されています。

もう一度検索