マティルド・ド・ダンマルタン

マティルド・ド・ダンマルタン：波乱の生涯を送ったブローニュ女伯

マティルド・ド・ダンマルタン（またはマティルド（2世）・ド・ブローニュ）は、13世紀前半にブローニュ女伯としてその名を歴史に刻んだ女性です。彼女の生涯は、結婚、政治、そして後継者問題といった、当時のヨーロッパ社会の複雑な側面を映し出しています。

生い立ちとブローニュ女伯としての即位

1202年に生まれたマティルドは、ブローニュ女伯イドと、その夫で共同統治者であったルノー・ド・ダンマルタンの娘でした。1216年、母の死によってブローニュ伯位を継承し、その統治者としての道を歩み始めます。彼女の初期の統治は、フランス王国の政治情勢に深く影響されました。

二度の結婚と政治的駆け引き

1223年、マティルドはクレルモン伯フィリップ・ユルプルと結婚します。フィリップはフランス王フィリップ2世の息子であり、この結婚によってマティルドはブローニュ、モルタン、オマール、ダンマルタンの共同統治者となります。しかし、フィリップは1226年にルイ8世が亡くなった後、兄嫁で摂政のブランシュ・ド・カスティーユに対して反乱を起こし、政治的な混乱に拍車をかけました。

1234年にフィリップが亡くなると、マティルドは一時的に単独で領地を統治しますが、男性の後継者が必要となり、1238年にポルトガル王子アフォンソと再婚しました。アフォンソは1248年に兄サンシュ2世の後を継いでポルトガル王となりますが、ブローニュ伯位の権利は放棄します。しかし、1253年にマティルドとアフォンソは離婚。これは、アフォンソが王位継承者を必要としていたことと、マティルドとの間に子供が育たなかったためとされています。

離婚後の波乱と晩年

離婚後、マティルドはブローニュにとどまり、夫のポルトガル王アフォンソ3世は、ベアトリス・デ・カスティーリャと結婚しました。マティルドはアフォンソ3世を重婚で訴え、ローマ教皇アレクサンデル4世はアフォンソ3世夫妻が滞在した場所全てに対し、秘蹟執行禁止命令を出しました。しかし、マティルドが1259年に亡くなるまで、アフォンソ3世とベアトリスは夫婦関係を解消しませんでした。

マティルドの遺体は、シトー会のゴメールフォンテーヌ修道院に埋葬されたと考えられています。

子女と後継者

マティルドは最初の夫フィリップとの間に、以下の二人の子供をもうけました。

ジャンヌ: ヌヴェール伯継ゴーシェと結婚したが、子供はいませんでした。
アルベリク: クレルモン伯となり、ブローニュ伯位の継承権を放棄しイングランドへ渡りました。

マティルドの直系が絶えた後、ブローニュ伯位は従妹のアデライード・ド・ブラバンに継承されました。アデライードは、マティルドの叔母とブラバント公アンリ1世の娘でした。

参考文献

Barber, Malcolm (1992). The Two Cities: Medieval Europe 1050–1320. Routledge.
Livermore, H.V. (1947). A History of Portugal. Cambridge University Press.
Wood, Charles T. (1966). The French Apanages and the Capetian Monarchy: 1224-1328. Harvard University Press.
Toussaint Duplessis, Michel (1740). Description géographique et historique de la haute Normandie, vol. 2. Nyon Père.

マティルド・ド・ダンマルタンの生涯は、中世ヨーロッパの貴族社会における女性の役割、権力闘争、結婚と後継者問題といった、複雑なテーマを浮かび上がらせます。彼女は自身の領地を治めるだけでなく、政治的な駆け引きの中で、その存在感を示しました。その波乱に満ちた人生は、歴史の中で注目すべき人物として、これからも語り継がれるでしょう。

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