マドリガル協奏曲

マドリガル協奏曲

ホアキン・ロドリーゴ作曲の「マドリガル協奏曲（Concierto madrigal）」は、2つのギターと管弦楽のために書かれた独創的な作品です。ギター協奏曲の分野で名高いロドリーゴが、1967年の「アンダルシア協奏曲」（4つのギターのための）に続き、その翌年の1968年に完成させました。この作品は、彼のギター音楽における多作さと多様性を示す一例と言えるでしょう。

楽曲は、伝統的な協奏曲の形式とは異なり、短い楽章を連ねた組曲のような構成をとっています。全10の部分から成り、それぞれが独立した小品のような性格を持っています。使用されている音楽的素材は、スペイン古来の旋律や舞曲、さらには16世紀の音楽や民謡など多岐にわたり、それらをロドリーゴ独自の個性的な響きと融合させています。作品全体のタイトルに冠されている「マドリガル」という言葉は、通常声楽曲の形式を指しますが、この協奏曲においては特定の深い音楽的な意味合いを持つものではなく、ロドリーゴがルネサンス音楽に対して抱いていた敬愛や親愛の情を示すものと考えられています。

作品を構成する10の楽章は以下の通りです。

1. ファンファーレ (Allegro marziale)
行進曲風の速いテンポで始まる前奏的な楽章です。リズミカルな推進力を持ち、全体の序曲のような役割を果たします。

2. マドリガル (Andante nostalgico)
ノスタルジックなアンダンテで奏される、優雅さと抒情性を湛えた楽章です。

3. エントラーダ (Allegro vivace)
「序奏」を意味するタイトル通り、活気のあるアレグロ・ヴィヴァーチェで奏される導入部分です。

4. 羊飼いよ、お前は来る、羊飼いよ、お前は行く (Allegro vivace)
クリスマスに歌われるスペインの伝統的な民謡の旋律に基づいています。アレグロ・ヴィヴァーチェのテンポで、牧歌的な情景を描写します。

5. ヒラルディーリャ (Presto)
アストゥリア地方に伝わる古い舞曲「ヒラルディーリャ」を素材とした、非常に速いプレストの楽章です。軽快でリズミカルな動きが特徴です。

6. パストラル (Allegro)
牧歌的な雰囲気を持つアレグロの楽章です。のどかで穏やかな情景が目に浮かぶようです。

7. ファンダンゴ (テンポ指定なし)
スペインを代表する情熱的な舞曲であるファンダンゴです。特定のテンポ指示はありませんが、力強く特徴的なリズムを持っています。

8. アリエータ (Andante nostalgico)
再びノスタルジックなアンダンテで、優美さを際立たせた楽章です。しばしば緩徐楽章のような性格を持って演奏されます。

9. サパデアート (Allegro vivace)
靴音を響かせるステップが特徴的なスペイン舞曲、サパデアートに基づいています。再びアレグロ・ヴィヴァーチェの活気あるテンポで、力強いスペインの色彩を示します。

10. スペイン風カッチャ (Allegro vivace - Andante nostalgico)
様々な音楽的なパロディ要素が盛り込まれた楽章です。アレグロ・ヴィヴァーチェで開始し、アンダンテ・ノスタルジコへと変化し、多面的な表情を見せながら曲を締めくくります。

これらの楽章を通して、ロドリーゴは2つのギターと管弦楽の豊かな響きを駆使し、スペインの多様な音楽的伝統への敬意と、彼自身の独創的な作曲技法を見事に融合させています。各楽章が持つ個性的な性格と、全体として組み合わされた時の色彩豊かな響きが、この「マドリガル協奏曲」の大きな魅力となっています。

もう一度検索