マドリード市の寓意

マドリード市の寓意

『マドリード市の寓意』は、フランシスコ・デ・ゴヤが1810年に制作した象徴的な油彩画であり、現在はマドリード歴史博物館に所蔵されています。この作品は、当時のスペインの政治状況や文化を映し出す重要なもので、マドリード市がスペイン国王ホセ1世に敬意を表するために依頼したものです。

制作の背景

1808年、ナポレオンがスペインを侵略し、兄のジョゼフ・ボナパルトをホセ1世として新国王に据えました。この出来事は、マドリード市の政治意識を変え、ホセ1世の肖像画を制作することが急務となりました。1809年、マドリード市議会はゴヤにその制作を依頼し、タデオ・ブラボー・デ・リベロがその計画を立てました。ゴヤは報酬として15,000レアルを受け取ったとされています。

作品の内容

作品には、盾に寄りかかる優雅な女性が描かれています。彼女はマドリード市を擬人化した存在であり、頭には王冠、白いチュニックとピンクのマントを身にまとっています。その左側には、マドリード市の紋章であるイチゴノキと熊が描かれた盾があります。さらに、2人の天使が「ドス・デ・マヨ」と書かれた巨大なメダリオンを掲げ、女性はそれを指差しています。

上部には「名声」と「勝利」を象徴する2人の翼を持った存在が飛んでおり、彼らはトランペットを吹いたり、月桂冠を掲げたりしています。画面の後方には忠誠を象徴する犬が隠れており、全体として寓意深い構図が形成されています。

政治情勢に応じた変化

この作品は、政治情勢の変化に伴い何度も手が加えられました。元々、メダリオン部分にはホセ1世の肖像が描かれていましたが、1812年のサラマンカの戦いでの変化により、彼はマドリードから逃げることになります。その結果、ゴヤはメダリオンに「憲法」という言葉を追加しました。後にホセ1世が帰国した後、彼の肖像画は再び描き直されましたが、その後もゴヤの弟子たちによって手が加えられ続けました。

1826年、ゴヤがフランスのボルドーに移住している間に、国王の肖像画は別の画家によって描き直され、その後の1837年にメダリオン部分は「憲法」という碑文に変更されましたが、最終的には1808年の市民の蜂起を象徴する「ドス・デ・マヨ」に改められました。

来歴

『マドリード市の寓意』は、常にマドリード市に所有されており、その歴史的な価値が評価されています。この作品は、当時のスペインの情勢やマドリード市民の政治的意識を象徴する重要な芸術品となっています。

作品に対する多様な解釈や、その変遷を通じて窥える歴史の真実は、今もなお多くの人々を魅了し続けているのです。

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