マヌエル・カセレス・アルテセーロ

マヌエル・カセレス・アルテセーロ、通称「マノロおじさん」（スペイン語: Manolo, el del bombo）は、世界でもっとも有名なサッカーサポーターの一人として広く知られた人物です。1949年1月15日、スペインのシウダ・レアル県に生まれた彼は、2025年5月1日に76歳でその生涯を閉じました。

彼の姿は、スペイン代表の試合において欠かせないアイコンでした。トレードマークである鮮やかなベレー帽と、背番号12番を付けたユニフォームをまとい、常に腕に抱えた大きな太鼓を打ち鳴らしてチームを鼓舞し続けたのです。かつてはバレンシアCFの熱心なサポーターでもありましたが、特に1982年以降のスペイン代表に対する揺るぎないサポートでその名声を確立しました。

マノロおじさんは、1982年以降にスペイン代表が行った試合のほとんど全てに現地で立ち会いました。この長年の旅路で、彼は合計15,000キロメートル以上もの距離を移動したと言われています。その情熱の証とも言えるのが、彼と共に国中、そして世界中を旅した太鼓です。彼はこの期間に、なんと9台から10台もの太鼓を使い潰したと語られています。

彼の献身的な応援活動にも例外はありました。2010年に南アフリカで開催されたFIFAワールドカップの最中、彼は風邪をこじらせて肺炎を患い、2010年7月3日に行われた準々決勝のパラグアイ戦を、残念ながら現地で応援することができませんでした。これは、1982年以降で彼が現地で応援できなかった数少ない試合の一つでした。しかし、スペインに帰国して治療を受け、回復すると、彼はすぐにチームに合流し、準決勝のドイツ戦からは再びスタジアムで声援を送りました。

サポーターとしての顔を持つ一方、マノロおじさんは実業家でもありました。バレンシアCFの本拠地であるエスタディオ・デ・メスタージャのすぐ隣でバルを経営しており、この店は単なる飲食店ではなく、彼が長年集めてきたサッカースポーツに関連する様々な記念品や資料を展示するスポーツミュージアムとしての役割も果たしていました。彼の人生は文字通りサッカーと共にありましたが、そのあまりにも熱狂的な応援活動が原因で、1987年には家族を失うという悲しい出来事も経験しています。それでも、彼は一人の養子を迎え、人生を歩み続けました。

晩年、マノロおじさんは呼吸器疾患を患いました。2025年4月末には、地元のビジャレアルにある病院に入院し、治療を受けていましたが、その甲斐なく、2025年5月1日の朝、静かに息を引き取りました。享年76歳でした。

彼の死去は、長年にわたりスペイン代表を支え続けた「12番目の選手」の喪失として、多くのサッカーファンに悲しみをもたらしました。彼の鳴らす太鼓の音はもう聞けませんが、その情熱とチームへの深い愛は、スペインサッカーの歴史に深く刻み込まれることでしょう。

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