マリア・テレザ・デ・ブラガンサ

マリア・テレザ・デ・ブラガンサ：激動の時代を駆け抜けた王女の生涯

マリア・テレザ・デ・ブラガンサ（1793年4月29日 - 1874年1月17日）は、ポルトガル王ジョアン6世の長女として生まれました。彼女はポルトガル王女であると同時に、スペイン王族との二度の結婚を通じてスペイン王女の称号も有していました。

生い立ちと結婚

1793年、マリア・テレザはジョアン6世とカルロッタ・ジョアキナ（スペイン王カルロス4世の娘）の間に、シントラ郊外のケルス宮殿で誕生しました。誕生時、彼女はポルトガル王位継承順位第2位として、ベイラ女公の称号を与えられました。1810年、ナポレオン戦争を避けてブラジルへ移住していたポルトガル王家のもとで、マリア・テレザは従兄にあたるスペイン王子ペドロ・カルロスと結婚しました。しかし、ペドロ・カルロスは結婚からわずか2年後の1812年に死去し、マリア・テレザは若くして未亡人となりました。二人の間には、一人息子のセバスティアン・ガブリエルがいました。

政治活動と内戦

マリア・テレザは非常に保守的な人物であり、末弟ミゲル1世がポルトガル王位を簒奪しようと企てた際には、ミゲルの同盟者として行動しました。また、義弟であり実の叔父でもあるモリナ伯カルロスのスペイン王位簒奪の企みにも加担しました。スペイン王フェルナンド7世の治世末期にはマドリードに居を構え、モリナ伯をスペイン王位に就けるために奔走しました。彼女は第一次カルリスタ戦争（1833年 - 1839年）において、カルリスタ、教会勢力、そして反動分子たちの強力な支援者となりました。

1837年、スペイン議会はマリア・テレザがモリナ伯と共謀してイサベル2世女王に対する反乱を起こしたとして、彼女のスペイン王位継承権を剥奪しました。同様に、彼女の息子セバスティアンの王位継承権も剥奪されましたが、セバスティアンは後にスペイン政府に帰順しました。また、この時、モリナ伯の息子たちとマリア・テレザの弟ミゲル1世も同じ理由でスペイン王位継承権を失いました。

再婚と晩年

1838年、マリア・テレザは亡き妹の夫であり、実の叔父であり、また政治的な同盟者でもあったモリナ伯カルロスと再婚しました。この結婚は政略的な意味合いが強く、二人の間に子供は生まれませんでしたが、マリア・テレザは継子となった甥たちの面倒をよく見たと伝えられています。スペインでの内戦が失敗に終わると、マリア・テレザとモリナ伯は国外へ逃れ、二度とスペインの地を踏むことはありませんでした。

モリナ伯と死別してから19年後の1874年、マリア・テレザはトリエステで波乱の生涯を終えました。彼女の生涯は、当時のヨーロッパの政治情勢、特にポルトガルとスペインの王室における権力闘争と深く結びついていました。保守的な政治姿勢を貫き、激動の時代を駆け抜けた王女として、歴史に名を刻んでいます。

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