マリア・ニコラエヴナ (ロイヒテンベルク公妃)

ロシア大公女マリア・ニコラエヴナの生涯：愛と芸術、そして波乱の時代

マリア・ニコラエヴナ大公女（1819-1876）は、ロシア帝国皇帝ニコライ1世と皇后アレクサンドラ・フョードロヴナの長女として、パヴロフスク宮殿で誕生しました。帝室の庇護のもと、華麗な宮廷生活を送った彼女の人生は、ロマンスと困難、そして芸術への情熱に彩られています。

1837年、マリア大公女はロシア皇帝宮廷を訪れたロイヒテンベルク公マクシミリアンと出会います。二人の恋は周囲の反対を押し切り、1839年に結婚へと至ります。マクシミリアンはナポレオン1世の義理の孫であり、宗教もカトリックであったため、この結婚はロシア帝室においても大きな話題となりました。皇帝ニコライ1世は当初反対しましたが、マクシミリアンにロシア皇族の称号を与え、サンクトペテルブルクでの生活を許しました。

夫妻は7人の子供をもうけ、ロシア宮廷で幸福な日々を送ります。1845年には、マリア大公女の名にちなんだマリインスキー宮殿へ移り住みました。夫妻は芸術を熱心に支援し、マクシミリアンは帝立芸術アカデミーの総裁に就任しました。しかし、1852年にマクシミリアンが他界すると、マリア大公女は後任の総裁となり、芸術界を牽引していきます。

マリア大公女はその後、グリゴリー・ストロガノフ伯爵と再婚しますが、これは身分違いの結婚だったため、ニコライ1世の存命中、秘密裏に行われました。公式に認められたのは、皇帝の死後の1856年です。この結婚は、彼女の人生の複雑さと奔放さを象徴する出来事でした。妹オリガは、マリアを「最も才能がありながらも、義務感に欠けていた」と評しています。

1862年、マリア大公女はイタリア・フィレンツェに移り住み、精力的に絵画や彫刻、家具などを収集しました。美術品収集家カール・リファールをアドバイザーに迎え、各地の美術館や私邸を巡り、膨大なコレクションを築き上げました。このコレクションは、彼女が芸術に対して並々ならぬ情熱を抱いていたことを物語っています。

1876年、マリア大公女はフィレンツェで亡くなりました。彼女の死後、莫大なコレクションは子供たちに分け与えられましたが、その一部は1884年と1913年に公開されました。しかし、ロシア革命によってコレクションは各地に散らばり、現在ではモスクワ、サンクトペテルブルク、ウィーン、そしてアメリカ合衆国などに分かれて所蔵されています。

マリア・ニコラエヴナ大公女は、ロシア帝国の宮廷生活、国際結婚、そして芸術への情熱という、劇的な人生を送りました。彼女のコレクションは、彼女の多様な人生を反映し、現在も人々を魅了し続けています。彼女の生涯は、19世紀のヨーロッパの王侯貴族たちの歴史を理解する上で、重要な手がかりを与えてくれます。また、彼女の芸術への情熱は、後の世代の芸術家やコレクターたちにも多大な影響を与えたことは疑いありません。

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