マリア・ブエノ

マリア・ブエノ（Maria Bueno, 1939年10月11日 - 2018年6月8日）は、ブラジル・サンパウロ出身の元女子テニス選手です。本名はマリア・エステル・アンディオン・ブエノ（Maria Esther Andion Bueno）。1960年代にその名を知らしめ、ブラジル人テニス選手として初めて世界のトップに上り詰めました。

ブエノは、ウィンブルドンで3勝、全米選手権（現在の全米オープンテニス）で4勝を挙げ、4大大会女子シングルスで計7勝を記録した、まさに伝説的な選手です。シングルスのみならず、ダブルスでも傑出した成績を残し、4大大会女子ダブルスで11勝、混合ダブルスで1勝を手にしています。

そのコート上での優雅かつスピーディーな動きから、「サンパウロのつばめ」（São Paulo Swallow）という愛称で親しまれました。アマチュア時代には62の大会で優勝し、プロ転向後には1974年の「ジャパン・オープン」で優勝を果たしています。

輝かしいキャリア

1958年、ブエノはアメリカのアリシア・ギブソンとペアを組み、ウィンブルドン選手権の女子ダブルスで初の4大大会タイトルを獲得しました。翌1959年には、ウィンブルドンと全米選手権のシングルスを制覇し、4大大会年間2冠を達成。

1960年、ブエノはウィンブルドン選手権で2連覇を達成。さらに、女子ダブルスでは「年間グランドスラム」を達成しました。全豪選手権のみクリスティン・トルーマン（イギリス）とペアを組みましたが、全仏選手権から全米選手権まではダーリーン・ハード（アメリカ）とのペアで3連勝を飾りました。この結果、1960年の4大大会女子ダブルスにおける「年間グランドスラム」は、ブエノ個人の記録として成立しています。

1963年には、全米選手権でマーガレット・スミスを破り、4年ぶり2度目の優勝を果たしました。1964年にも再び、ウィンブルドンと全米選手権で年間2冠を達成しています。最後の4大大会シングルス優勝は、1966年の全米選手権でした。当時、ブエノはまだアマチュア選手でした。4大大会にプロ選手の出場が認められるようになったのは、1968年の「オープン化」以降のことです。ブエノもこのオープン化を受け、プロテニス選手としての道を歩み始めました。

苦難を乗り越えて

しかし、マリア・ブエノのテニス人生は、決して平坦な道のりではありませんでした。オープン化が実施された1968年、彼女は自動車事故に遭い、生死をさまよう重傷を負います。5回もの大手術と長いリハビリを経て、1974年に奇跡的なカムバックを果たした彼女の姿は、多くの人々に感動を与えました。

復帰後、ブエノは日本を訪れ、「ジャパン・オープン」で優勝。準決勝では沢松和子を破り、沢松の国内連勝記録を192でストップさせました。この勝利が、ブエノにとってプロテニス選手として最初で最後のタイトルとなりました。

1976年にはウィンブルドンに復帰し、4回戦まで進出。1977年の3回戦では、かつてのライバル、ビリー・ジーン・キングに敗れました。キングは当時、「昔の彼女のままを覚えていたかった。今日の彼女を見るのはつらかった」と語ったと伝えられています。1978年、マリア・ブエノは国際テニス殿堂入りを果たしました。

ブエノの全盛期から約30年後の1997年、グスタボ・クエルテンがブラジル人男子選手として世界的な活躍を見せ始めました。クエルテンは全仏オープンで3度の優勝を果たし、2000年には男子シングルスの年間ランキング1位に輝いています。

2018年6月8日、マリア・ブエノは口腔癌のため、故郷サンパウロで78年の生涯を閉じました。

主な戦績

4大大会優勝
全豪選手権 女子ダブルス：1勝（1960年） ［女子シングルス準優勝1度：1965年］
全仏選手権 女子ダブルス：1勝（1960年）／混合ダブルス：1勝（1960年） ［女子シングルス準優勝1度：1964年］
ウィンブルドン選手権 女子シングルス：3勝（1959年、1960年、1964年）／女子ダブルス：5勝（1958年、1960年、1963年、1965年、1966年）
* 全米選手権 女子シングルス：4勝（1959年、1963年、1964年、1966年）／女子ダブルス：4勝（1960年、1962年、1966年、1968年）

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