マリウポリの劇場への爆撃

マリウポリ劇場爆撃事件

2022年3月16日、ロシア軍によるウクライナ侵攻の際、マリウポリ市にある劇場が爆撃されました。この劇場は、包囲戦下で市民の避難場所として利用されており、爆撃時には多数の市民が中にいたとされています。この事件は、国際社会から強い非難を浴び、戦争犯罪の疑いも指摘されています。

背景

2022年2月24日、ロシア軍は親ロシア派勢力と共にマリウポリを包囲しました。これにより、都市は深刻な被害を受け、多数の死傷者が出ました。食料、ガス、電気などの生活インフラも遮断され、3月17日頃には、都市の80～90％が破壊されたとされています。

避難所としての劇場

劇場は、侵攻により破壊された多くの文化遺産の一つです。3月14日の衛星写真では、劇場の前にロシア語で「ДЕТИ（子供たち）」と大きく書かれており、攻撃対象ではないことを示そうとしていました。マリウポリ市議会の職員によれば、劇場は市内で最大の避難所であり、爆撃時には女性と子供しかいなかったとされています。人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査では、3月16日頃には500～800人が劇場に避難していたとされています。

爆撃の発生

3月16日、ウクライナはロシア軍が民間地域を爆撃したと非難しました。劇場は、スイミングプール施設や車列などとともに爆撃され、建物は瓦礫と化しました。当時、劇場には500～1200人の市民が避難していたとされますが、爆撃直後の死傷者数は不明でした。劇場の地下シェルターは無事でしたが、多くの市民が崩壊した瓦礫の中に閉じ込められ、その後の救助活動は困難を極めました。ウクライナ議会議員のドミトロ・グリン氏は、ロシア軍の攻撃が継続したことで救助活動が妨げられていると訴えました。

被害状況と犠牲者

爆撃直後、正確な死傷者数は不明でしたが、一部の市民が生還し、18日頃には130人が救出されました。マリウポリ市議会は当初、重傷者はいたものの死者はいないと発表しました。3月22日には、ゼレンスキー大統領が130人の救出を主張しましたが、依然として数百人が瓦礫の下に閉じ込められている可能性がありました。その後、市議会は3月25日に、爆撃による死者数を約300人と発表しました。この推定は目撃証言に基づいたもので、独立した検証はされていません。

爆撃に対する反応

ウクライナのゼレンスキー大統領は、この爆撃をロシアによる戦争犯罪だと非難しました。一方、ロシア国防省はウクライナの主張を否定し、アゾフ大隊が劇場を爆破したと主張しました。ロシアメディアは、ロシア空軍は爆撃しておらず、アゾフ大隊が人質を取り爆撃したと報じました。

国際的な調査と反応

イタリアの文化財・文化活動省は、ウクライナ政府に劇場の再建を申し出ました。欧州安全保障協力機構（OSCE）は、4月13日に爆撃に関する報告書を発表しました。アムネスティ・インターナショナルは6月30日に報告書を発表し、ロシア軍による劇場への空爆を「戦争犯罪」として調査すべきだと結論付けました。同団体は、ロシア軍が意図的に民間施設を攻撃した可能性が高いと指摘し、建物の両側に書かれた「子供たち」という文字を無視したと非難しました。また、爆撃には400～800kgの爆弾が使われたと推定し、ロシア軍がSu-25、Su-30、Su-34などの戦闘機を使用した可能性が高いとしました。アムネスティは、アゾフ大隊が劇場を攻撃したとするロシア側の主張を否定しています。

アムネスティの調査では、劇場内にいた人数は300人から1000人と推定され、ほとんどが女性、子供、高齢者でした。当初、市当局は死者数を300人と推定しましたが、AP通信の調査では600人が死亡した可能性も指摘されています。アムネスティは12名の死亡を確認しましたが、死者数はさらに多い可能性が高いとしています。

その後

2022年12月、ロシア側は劇場建物の撤去作業を開始しました。

結論

マリウポリの劇場への爆撃は、ロシア軍による民間人に対する攻撃として強く非難されるべき事件です。多数の市民が犠牲となり、国際社会における戦争犯罪の疑いが深まっています。この事件は、ウクライナ侵攻におけるロシア軍の行為の深刻さを象徴する出来事として、記憶されるべきでしょう。

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