マリウポリの病院への爆撃

マリウポリ病院爆撃事件の概要

2022年3月9日、ロシア軍によるウクライナ侵攻のさなか、マリウポリの産科・小児科病院が爆撃されました。この病院は、停戦合意中にも関わらず、ロシア軍の攻撃を受けました。

この爆撃により、少なくとも4人が死亡、16人が負傷し、1人が死産となりました。被害状況は甚大で、建物は外装が破壊され、自動車が燃焼しました。病棟の壁は崩壊し、医療器具は破壊され、窓は吹き飛ばされました。

犠牲者

爆撃により、妊娠中の女性や新生児、医療スタッフが犠牲になりました。当初、17人が負傷したと報じられましたが、後に死亡者数が確定しました。爆撃時に撮影されたある妊婦は、別の病院に搬送された後、死産し、その後死亡しました。彼女は骨盤骨折などの重傷を負っており、それが死産につながったとされています。

別の妊婦、インスタグラマーのマリアンナ・ヴィシェギルスカーヤは、爆撃の翌日に出産しましたが、後に病院は空爆ではなく砲撃されたと証言しました。しかし、AP通信は彼女の証言が証拠と矛盾すると指摘しています。

戦争犯罪の主張と国際社会の反応

この爆撃は、ウクライナのゼレンスキー大統領をはじめ、欧州連合外務・安全保障政策上級代表のジョセップ・ボレル、イギリスの国防大臣ジェームズ・ヒーピーなど、多くの国際的なリーダーによって戦争犯罪と断定されました。

マリウポリの副市長は、この爆撃をジェノサイドであると非難し、マリウポリ市議会はロシアによる意図的な攻撃であると主張しました。

一方、ロシア側は、病院にウクライナ軍が存在していたと主張し、爆撃を正当化しようとしました。しかし、USAトゥデイはロシアの主張を虚偽だと否定しています。ロシア外務大臣のセルゲイ・ラブロフは、病院が過激派集団の拠点として利用されていたと主張しましたが、国連ロシア大使が言及した病院と、実際に爆撃された病院が異なることが指摘されています。

ロシア大使館は、爆撃はフェイクであり、被害者の女性は女優であると主張しましたが、ツイッター社はこれを偽情報として削除しました。

国際社会は、この爆撃を強く非難しました。イギリスのジョンソン首相は「非道徳的」、アメリカのバイデン政権は「野蛮な行為」、欧州連合のボレル上級代表は「凶悪な戦争犯罪」と述べました。また、バチカン、国連、ギリシャなどもこの爆撃を非難し、世界中のメディアがこの事件を報じました。

欧州安全保障協力機構のレポート

欧州安全保障協力機構は、2022年4月13日にマリウポリの爆撃に関するレポートを発表し、産科病院が明確に識別可能であり、機能していたことから、ロシアの行為は戦争犯罪であると断定しました。

その他の関連事項

この爆撃事件は、マリウポリにおけるロシア軍の残虐行為の象徴的な事例となりました。このほかにも、マリウポリ劇場や芸術学校への爆撃事件も発生しており、多くの民間人が犠牲になっています。

参照:
欧州安全保障協力機構レポート: “Report on Violations of international Humanitarian and Human Rights Law, War Crimes and Crimes against Humanity Committed in Ukraine since 24 February 2022”

このマリウポリ病院爆撃事件は、国際的な人道法に違反する重大な戦争犯罪であり、民間人に対する無差別な攻撃は決して許されるべきではありません。

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