マリオカート ワールド

マリオカート ワールド

『マリオカート ワールド』は、2025年6月5日にNintendo Switch 2用ソフトとして任天堂から発売されたレースゲームです。長年愛される「マリオカート」シリーズの通算9作目にあたり、Nintendo Switch 2本体の発売と同時に楽しめるローンチタイトルの一つとして注目を集めました。2025年4月2日の公式発表を経て、同年4月17日には専用の特別番組も配信され、その詳細が明らかになりました。

ゲームシステム

本作最大の特色は、シリーズで初めて採用されたオープンワールド形式です。プレイヤーはコースという限られた空間だけでなく、マップ上に広がる世界中を自由に探索し、様々な場所を走行できます。これにより、これまでのシリーズにはなかった、広大なフィールドを駆け抜ける爽快感が味わえます。また、同じコースやエリアであっても、時間帯や天候によって景観や走行状況が変化する要素も盛り込まれており、プレイするたびに新たな発見があります。

レースにおいては、シリーズ史上最多となる24台のマシンが同時に走行します。これは前作『マリオカート8 デラックス』の倍にあたる台数で、より賑やかで白熱したレース展開が期待できます。

アイテム

おなじみの甲羅やバナナといった定番アイテムに加え、新たに6種類のアイテムが登場します。中でも注目は「カメック」のアイテム。これを使うと、ライバルを魔法で別の姿に変身させて走行を妨害できるなど、レースに新たな駆け引きが生まれます。

ゲームモード

多岐にわたるプレイモードが用意されています。

• - グランプリ: 4つのコースを走り、合計獲得ポイントで総合順位を競う伝統的なモードですが、本作では周回ルールに独自の変更が加えられました。1コース目は従来の3周ですが、2コース目以降は、1周目と2周目はコース間の道中を走行し、3周目のみコース本体を1周するという、オープンワールドならではの工夫が凝らされています。
• - サバイバル: ワールド全体を横断する長大なルートを走り抜けるモードです。道中に設定されたチェックポイントを、決められた順位以内で通過できなければその場で脱落となり、最後まで走りきったプレイヤーが勝利となります。
• - フリーラン: 広大なゲームの世界を文字通り自由に探索できるモードです。通常のレースでは通行止めになっている道や、普段は入れない水上なども走行可能です。ワールドの各所に隠されたPスイッチやコイン、ハテナパネル、ピーチメダルなどを探し集めるやり込み要素もあり、Pスイッチを踏むと特別なミッションが開始されます。
• - タイムアタック: 最速記録を目指してコースを走り込むストイックなモードです。
• - VSレース: ルールを自由に設定し、オリジナルのレースを楽しめるモードです。グランプリやサバイバルには含まれない場所も、コースとして選択できる場合があります。
• - ふうせんバトル: アイテムを使ってライバルの風船を割り合い、割った数を競う対戦モードです。
• - あつめてコイン: コース上に散らばるコインをより多く集めることを目指すモードです。

キャラクターとマシン

これまでのシリーズを彩ってきたキャラクターたちに加え、本作では多数の新キャラクターがドライバーとして参戦します。公開された情報だけでも、モンテやクリボー、パタテンテン、サイドステッパー、さらにはウシといった、これまで妨害役として登場していたキャラクターたちがハンドルを握ることが明らかになっています。

マシンのカスタマイズ機能は本作では廃止され、『マリオカートWii』のように、複数のマシンの中から選択する形式に戻されました。オープンワールドを走るにあたり、レース用のカートだけでなく、日常で見かけるような様々な乗り物も登場します。

具体的なコース名としては、「おばけぬま」シリーズや「バニラレイク」などが、コースマップなどから確認されています。

開発経緯

本作の開発は、『マリオカート8 デラックス』の開発終盤から次作の構想が練られ始め、2017年3月に試作がスタート、年末には正式なプロジェクトとして立ち上がりました。『8DX』で従来の個別コース形式が一つの完成形に達したとの判断から、次は大きな世界を自由に走る形式へと挑戦の方向が定められ、ワールドマップの導入が考案されました。これが、ナンバリングではなく『マリオカート ワールド』という新たなタイトルが冠された理由です。『8DX』までの12人対戦では、広々としたコースでプレイヤーが分散しやすかったため、本作ではより密度のあるレースを実現するために、参加人数を24人に倍増させる決定がなされました。デザイン面では、『マリオカート8』の洗練された雰囲気から、『スーパーマリオカート』のような親しみやすい“わんぱく”なテイストを目指す方針が取られています。

開発初期には、要求される要素全てを当時のNintendo Switchの性能に収めることへの苦労がありましたが、2020年に次世代機であるNintendo Switch 2の構想がもたらされたことは、開発チームにとって大きな希望となりました。詳細なスペックが明らかになるまでは試算が続けられました。

シリーズ恒例の新ドライバー参戦においては、『8DX』で多数のキャラクターが登場した後だったため、開発スタッフは新たなアイデアに悩んでいました。その中で、これまで敵キャラクターだったウシが家畜運搬車を運転するスケッチが提出されたことがきっかけとなり、ウシのドライバー参戦が決定。これがプクプクなど他の妨害役キャラクターの参戦を後押しし、さらにはアイテムとしてカメックがライバルをNPCの姿に変身させるアイデアや、ラクダやキリンといった新たなユニークな妨害役の発想にも繋がっていったとのことです。

ゲームデザインにおいては、シリーズが普段あまりゲームをしない層にも楽しまれる性質を持つことを踏まえ、メニュー画面は人数を選択すればすぐにプレイ開始できるシンプルさが追求されました。また、フリーランモードの「Pスイッチミッション」は本作からの新要素であるため、ゲームが苦手なプレイヤーでも楽しめるよう、テストプレイを重ねて改良が図られています。

サウンド

サウンド面でも“わんぱく”な世界観を表現するため、生楽器の比率が前作より増やされました。特に、力強い響きを持つハーモニカがメインテーマに起用されています。同時に、広大なワールドを表現するためのサウンドシステムの見直しも行われました。ミュージックリードを務める朝日温子氏は、かつてNPCだったキャラクターたちがドライバーとして登場するにあたり、彼らの感情表現を音で補う必要が生じ、ボイス担当者が苦労したであろうと語っています。

『マリオカート ワールド』は、オープンワールド化という大きな変革を遂げ、シリーズの新たな地平を切り開く意欲作として登場しました。

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