マリオット・アルベルティネッリ

マリオット・アルベルティネッリ（Mariotto di Bindo di Biagio Albertinelli、1474年10月13日 - 1515年11月5日）は、ルネサンス期のイタリア、特にフィレンツェで活動した画家です。彼の芸術的なキャリアは、フラ・バルトロメオとの密接な協力関係によって特徴づけられます。アルベルティネッリは、宗教的な主題や肖像画において、洗練された技巧と調和のとれた構図で知られています。

生い立ちと初期の訓練

アルベルティネッリは、フィレンツェで金箔職人の息子として生まれました。父親の仕事から美術の世界に入り、その後、12歳（1486年）の時に画家のコジモ・ロッセッリの工房に入り、本格的な絵画の訓練を受け始めました。この工房で、彼は同じく修業中であったフラ・バルトロメオ（本名：バッチョ・デッラ・ポルタ）と出会い、生涯にわたる親友となりました。アルベルティネッリは、メディチ家の美術コレクションに触れる機会を得て、古代美術品の模写を通じて技術を磨きました。また、メディチ家からの依頼で絵画制作も行いましたが、1494年にメディチ家当主ピエロ・ディ・ロレンツォ・デ・メディチがフィレンツェを追放されたことにより、その関係は一時的に中断されました。

フラ・バルトロメオとの共同制作

1494年、フラ・バルトロメオがロッセッリの工房から独立した際、アルベルティネッリは彼と共同で工房を開設し、すべての仕事を共有しました。この共同経営は、1500年にフラ・バルトロメオが一時的に画家としての活動を中断し、ドミニコ会修道士としてサン・マルコ修道院に入修するまで続きました。この期間中、二人は互いの影響を受けながら、多くの作品を制作しました。アルベルティネッリの作品には、フラ・バルトロメオの影響が見られ、特に構成や人物描写において、その特徴が顕著に表れています。フラ・バルトロメオの退去後、アルベルティネッリは彼の未完の注文を引き継ぎ、1503年にはジュリアーノ・ブジャルディーニを新たなパートナーとしました。

その後の活動と晩年

1510年、ドミニコ会修道院がフラ・バルトロメオの画家としての活動を許可したことで、アルベルティネッリとの共同制作が再開されました。しかし、1513年初頭、アルベルティネッリは私生活上の問題を理由に絵画制作から一時的に離れ、より気楽な生活を求めて宿屋の主人を始めました。しかし、その年の終わりには再び絵画制作を再開し、芸術的な活動を続けました。1515年、アルベルティネッリは病に倒れ、41歳という若さでこの世を去りました。

弟子と影響

アルベルティネッリの工房では、多くの画家たちが学び、彼の技術やスタイルを受け継ぎました。弟子や工房で働いた画家には、フランチャビージオ、ヤコポ・ダ・ポントルモ、ジュリアーノ・ブジャルディーニ、インノチェンツォ・ダ・イモラなどがいます。これらの画家たちは、アルベルティネッリの教えを受け継ぎ、ルネサンス美術の発展に貢献しました。

作品の特徴

アルベルティネッリの作品は、緻密な描写と調和のとれた構図が特徴です。彼の作品は、宗教的な主題を扱いながらも、人物の感情や内面を繊細に表現しています。また、色彩感覚にも優れ、暖色系の色調を効果的に用いることで、作品に深みと温かみを与えています。



アルベルティネッリは、ルネサンス期のフィレンツェ美術において重要な役割を果たした画家の一人です。彼の生涯と作品は、当時の美術動向を知る上で貴重な資料となっています。

参考文献

Bernard Berenson, La pittura italiana del Rinascimento, Firenze, 1965
Luisa Marcucci: Albertinelli, Mariotto, In: Kindlers Malereilexikon, Zürich 1964—1971, S. 42 ff.

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