マリオペイント

『マリオペイント』は、1992年7月14日に任天堂から発売されたスーパーファミコン用ソフトです。スーパーファミコンマウスとマウスパッドが同梱されており、スーパーファミコン初のマウス専用ソフトとして登場しました。

概要

このソフトの最大の特徴は、マウスを使って絵を描いたり、音楽を作ったり、アニメーションを作ったりと、様々なクリエイティブな活動が手軽に楽しめる点です。当時、家庭用パソコンはまだ普及しておらず、高価なMacintoshや業務用のワークステーションでしか実現できなかったCG制作を、子供でも手の届く価格で体験できる画期的なソフトでした。

発売当時、パソコンは主にゲームやビジネス用途に使われており、グラフィック描画能力に優れたパソコンは非常に高価でした。そのため、家庭で手軽にCG制作を体験できる環境はほとんどありませんでした。そのような状況下で発売された『マリオペイント』は、まさに「お絵描きソフト」の先駆けと言える存在でした。

また、パソコンでは文字入力や操作の円滑化のために使われていたマウスを、ゲーム機ユーザーに広める役割も果たしました。当時、ゲーム機ユーザーにとってマウスは馴染みの薄いデバイスでしたが、同梱という形で、楽しみながら新しい入力デバイスに触れてもらうという設計思想は成功し、おまけとして収録されていた『ハエたたき』を含め、若年層にも広く受け入れられました。

『マリオペイント』に搭載されている機能は、色鉛筆やクレヨン、スプレー、塗りつぶしなど、必要最低限のものに絞られており、業務用のCG制作システムと比べると貧弱でした。しかし、一般家庭で購入できる価格で、2DのCG制作に関わる一連の作業を体験できるシステムを構築した点は画期的でした。また、パソコンで使われていたマウスという入力デバイスを家庭用ゲーム機に導入した点も、先見の明があったと言えるでしょう。

発売当初から、本格的なグラフィックソフトと比べると性能や機能は劣りましたが、ゲーム機という手軽なプラットフォームで、子供でも遊び感覚でCG作画を楽しめるソフトウェアとして唯一の存在でした。特筆すべきは、そのユーザーインターフェースの完成度です。発売から17年後の2009年に発売されたニンテンドーDS用ソフト『メイドイン俺』のゲーム制作モードにも、ほぼ同様のユーザーインターフェースが採用されています。

開発時の仮タイトルは「ROBO PAINT」でした。しかし、発売にあたり人気のマリオを採用した方が販売的に良いと判断され、「マリオペイント」になったそうです。セーブデータを圧縮するロボットやハエたたきのキャラクターがロボットになっているのは、その名残であると、ディレクター兼デザイナーの松岡氏は語っています。

ゲーム内容

『マリオペイント』には、以下のような主なモードがあります。

お絵かきスクリーン
マウスを使って自由に絵を描くモードです。色鉛筆、クレヨン、スプレー、塗りつぶしなどの基本的なツールが用意されており、16色の中から色を選んで描画できます。スタンプ機能もあり、あらかじめ用意されたキャラクターやパターン、自作のスタンプも利用可能です。消しゴムツールは、指定した部分を透明に戻すことができます。また、画面右下の犬のアイコンを押すと、操作を1段階だけ元に戻すことができます。さらに、4種類の塗り絵を呼び出すことも可能です。

アニメーションランド
画面を分割して絵を描き、その絵が順に切り替わることでアニメーションを作成するモードです。お絵かきスクリーンで描いた絵をコピーしたり、アニメーションの速度を設定したり、パスライン（移動経路）を引いてお絵かきスクリーンの上を移動させることができます。サウンドコラージュで作成した音楽をBGMとして流すことも可能です。

サウンドコラージュ
五線譜に音符のアイコンを配置して、音楽を作成するモードです。13種類の音階と15種類の音色から選択できます。3つの音を同時に鳴らすことができ、曲の長さは96拍まで、テンポも変更可能です。作成した音楽は、アニメーションランドでアニメーションと組み合わせて楽しむことができます。

ハエたたき
マウス操作に慣れるためのミニゲームです。画面上を飛び回るハエをマウスでクリックして退治します。小型のハエ、黄色のハエ、爆弾ハエ、水色のハエ、巨大ハエの5種類が登場します。全部で3ステージあり、1周するごとに難易度が上がります。このミニゲームは、『メイドインワリオ』や『スーパーマリオメーカー』にも収録されています。

タイトル画面

タイトル画面はシンプルなデザインで、「MARIOPAINT」の文字が描かれています。この文字をクリックすることで様々なエフェクトを楽しむことができます。

M: マリオが小さくなったり大きくなったりする。
A(左側): Aの字が落下したり、マリオが巻き込まれたりする。
R: Rの字が歩き回り、「任天堂」を逆再生した音声が再生される。
I(左側): 画面の色が反転したり、音楽の音程がおかしくなったりする。
O: Oの字が爆発し、タイトルロゴが飛び散る。
P: 草原の絵が現れ、様々な効果音が再生される。
A(右側): ヨッシーが現れ、BGMに打楽器パートが追加される。
I(右側): 画面が揺れ、音楽も震えるようになる。
N: スタッフロールが表示され、BGMに木琴とコンガの伴奏が追加される。
T: ポインタがクレヨンに変わり、虹色の色彩でお絵描きができる。

評価

ゲーム誌『ファミコン通信』のクロスレビューでは、40点満点中35点という高評価でプラチナ殿堂入りを果たしました。レビュアーからは、「手軽に楽しめる」「細かい部分にも遊びが詰まっている」「一生遊べるソフト」と肯定的な意見が寄せられましたが、一方で「音楽はあくまでおまけ」「マウスが安っぽい」といった否定的な意見もありました。

『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票による「ゲーム通信簿」では、30点満点中23.92点と評価され、スーパーファミコン全ソフトの中で22位にランクインしています。

その他

『マリオペイント』の発売後、作品のコンテストが開催されたり、サテラビューで「マリオペイントBS版」が配信されたりしました。また、続編的なソフトとして「マリオアーティストシリーズ」が存在します。CMでは、「聖者の行進」の替え歌が使われたり、サウンドコラージュのサンプル曲が使われたりもしています。

関連作品

メイドイン俺: 作成ツールの内容やシステムは『マリオペイント』を原型としています。
スーパーマリオメーカー: 『マリオペイント』のハエたたきやコースロボットなどの要素が随所に見られます。

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