マリー・エレオノーレ・フォン・ブランデンブルク (1607-1675)

マリー・エレオノーレ・フォン・ブランデンブルク：激動の時代を生きた公女

マリー・エレオノーレ・フォン・ブランデンブルク（1607年4月1日 - 1675年2月18日）は、ブランデンブルク選帝侯ヨアヒム・フリードリヒの娘として生まれました。彼女の生涯は、三十年戦争というヨーロッパを揺るがした大戦の時代と重なり、その中で様々な苦難と政治的な役割を担いました。

生い立ちと家族

マリー・エレオノーレは、ヨアヒム・フリードリヒとその2番目の妻エレオノーレ（プロイセン公アルブレヒト・フリードリヒの娘）の一人娘として誕生。しかし、生後まもなく両親を相次いで亡くし、叔父のブランデンブルク＝バイロイト辺境伯クリスティアンとその妻マリー夫妻に引き取られ、養育されました。幼くして孤児となった彼女にとって、この叔父夫婦の存在は大きな支えとなったでしょう。

結婚と亡命生活

1631年、マリー・エレオノーレはプファルツ選帝侯フリードリヒ5世の弟ルートヴィヒ・フィリップと結婚。しかし、当時夫の一家は三十年戦争の影響で故国を追われ、亡命生活を送っていました。1632年にスウェーデン軍がプファルツ選帝侯領を一時的に解放すると、エレオノーレは夫とともにプファルツへ移り、夫が摂政として領地を治めるのを支えました。しかし、束の間の平和も長くは続かず、1634年に皇帝軍が再びプファルツを占拠したため、夫妻はスダンへの亡命を余儀なくされました。戦乱の時代、彼女は夫を支えながら各地を転々としました。

ジンメルン公領の摂政として

三十年戦争終結後、夫妻は故国に戻りますが、1655年に夫ルートヴィヒ・フィリップが死去。その後、甥であるプファルツ選帝侯カール・ルートヴィヒが、エレオノーレの息子ルートヴィヒ・ハインリヒ・モーリッツの後見人となると宣言し、プファルツ＝ジンメルン公領を占拠するという事態が発生。これに対し、マリー・エレオノーレは甥孫にあたるブランデンブルク選帝侯フリードリヒ・ヴィルヘルムに苦境を訴え、ジンメルン公領の摂政に据えられるよう働きかけました。その結果、神聖ローマ皇帝フェルディナント3世は1655年7月6日、エレオノーレをジンメルン公領の正統な摂政とする勅裁を下し、彼女は公領を統治する立場となりました。1658年に摂政を退き、息子のルートヴィヒ・ハインリヒ・モーリッツに実権を委ねるまでの間、彼女は公領の安定に尽力しました。

その後

1674年、息子ルートヴィヒ・ハインリヒ・モーリッツが子供のないまま亡くなると、ジンメルン公領は本家の選帝侯領に回収され、エレオノーレはカイザースラウテルンを退去。翌1675年に隠棲先のバート・クロイツナハで生涯を閉じました。彼女の遺骸は、ジンメルンのザンクト・シュテファン教区教会に葬られています。

ヨハンネス・コッケイウスとの交流

マリー・エレオノーレは、神学者ヨハンネス・コッケイウスの後援者としても知られており、二人の間には膨大な数の往復書簡が交わされています。信仰篤い彼女は、神学にも深い関心を持っていたことが伺えます。

マリー・エレオノーレ・フォン・ブランデンブルクは、激動の時代を生き抜き、公女、妻、そして摂政として、それぞれの立場で役割を果たしました。彼女の生涯は、戦争と政治に翻弄されながらも、自らの権利を守り、家族と領地のために奔走した女性の姿を伝えています。

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