マリー・テレーズ・ドートリッシュ

マリー・テレーズ・ドートリッシュの生涯

マリー・テレーズ・ドートリッシュ（Marie Thérèse d'Autriche、1638年9月10日 - 1683年7月30日）は、フランス王ルイ14世の王妃であり、その生涯は数々の歴史的背景とともに語られています。彼女はスペイン王フェリペ4世を父に、そしてフランス王アンリ4世とマリー・ド・メディシスの子であるイサベル・デ・ボルボンを母に持つという、非常に名門の家系に生まれました。彼女のスペイン名はマリア・テレサです。

結婚と政治的背景

1659年、フランスの大宰相ジュール・マザランの取り計らいによって、マリーはルイ14世の妃に選ばれました。そして1660年6月9日、彼らはフランス領バスクのサン＝ジャン＝ド＝リュズで結婚します。この結婚はピレネー条約に基づき、マリーの持参金として賠償金が付けられる代わりに、彼女とルイ14世の子供達がスペインの王位継承権を放棄するという条件でした。しかし、スペイン王家が取り決めに従うことができなかったため、まもなく国際的な緊張が高まり、ネーデルラント継承戦争やスペイン継承戦争に繋がる要因を作り出しました。

フランス王妃としての生活

マリーはフランス語が流暢ではなく、スペイン訛りのフランス語を話すため、周囲から懸念されることもありました。彼女は政治や文学にはあまり興味を示さず、義母であるアンヌ・ドートリッシュと共に祈りやトランプ遊びに興じていました。アンヌは同じスペイン・ハプスブルク家の出身であり、彼女との関係は良好でしたが、アンヌは1666年に亡くなりました。

ルイ14世との結婚は一見良好に思えましたが、マリーの性格がかえって彼を遠ざける原因となり、次第に国王は彼女を顧みなくなりました。ルイ14世は多くの愛人を持つようになり、マリーは彼らの存在を最後まで知らされなかったと言われています。また、控えめであった寵姫ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエールに対しては友好的で、彼女が修道院に入る際には見舞いに行くこともありました。

一方で、自分こそが王妃としての地位を誇示するモンテスパン侯爵夫人には嫌悪感を抱いており、その存在が国を滅ぼす原因になると考えていました。さらに、信心深いマントノン侯爵夫人が寵姫として迎えられると、マリーは彼女の配慮に感謝し、自身が扱われていることに感慨深い思いを抱いたようです。

家族と最期

マリー・テレーズは、ルイ14世との間に3人の息子と3人の娘をもうけますが、長男以外の子供は早逝しました。長男のルイは後にグラン・ドーファンとして知られ、ルイ15世の祖父となります。マリー・テレーズは1683年に44歳でこの世を去り、その死因は腋にできた癌とされている。彼女の死に際して、長い間愛人との関係にあったルイ14世も涙を流して別れを告げたと言われています。

最後に、マリーの持参金が未だ王家に支払われていないことを理由に、グラン・ドーファンの次男フィリップはスペイン王位継承権の放棄が無効であるとし、フェリペ5世として王位を継承しました。彼女の生涯は、類まれな王家の血筋と、厳しい運命が交錯した歴史に彩られています。

もう一度検索