マリー・ドレスラー

マリー・ドレスラー：ハリウッドを彩った遅咲きの星

マリー・ドレスラー（1868年11月9日 - 1934年7月28日）は、カナダのオンタリオ州で生まれた女優です。60歳を過ぎてからハリウッドでスターとなり、華々しい活躍を見せながらも、わずか数年でその生涯を閉じました。彼女の人生は、努力と才能、そして時代の流れが織りなすドラマに満ち溢れています。

14歳で家を出てコーラスガールとしてキャリアをスタートさせました。その後、ブロードウェイでの舞台経験を経て、ヴォードヴィリアンとして活躍。1900年代初頭にはヴォードヴィルのスターとなり、高い人気を誇りました。

映画界への足掛かりは、1910年の主演舞台『Tillie's Nightmare』の大成功でした。この作品を映画化した『醜女の深情け（原題：Tillie's Punctured Romance）』（1914年）で映画デビューを果たします。この作品は、ハリウッド初の長編コメディ映画として知られ、チャールズ・チャップリンが監督以外で参加した最後の作品にもなりました。

しかし、その後は順風満帆とはいきませんでした。『Tillie's Tomato Surprise』（1915年）、『Tillie Wakes Up』（1917年）といった続編的な作品に出演するものの、キャリアは伸び悩み、1918年には仕事が途絶えてしまいます。ヴォードヴィルに復帰するも、1919年のストライキのリーダー役を務めたことが原因でブラックリスト入りし、1920年代はニューヨークでの仕事が困難になりました。

転機はMGMの脚本家フランシス・マリオンとの出会いでした。マリオンは、自身の脚本を担当した『The Callahans and the Murphys』（1927年）にドレスラーを主演として起用。その才能を見出したMGMの大プロデューサー、アーヴィング・タルバーグは彼女をスターとして再起させることを決意します。

トーキーの時代が、ドレスラーをスターダムへと押し上げます。1930年、マリオン脚本のグレタ・ガルボ主演映画『アンナ・クリスティ』での演技が高く評価され、同年公開の『惨劇の波止場』で第4回アカデミー賞主演女優賞を受賞。さらに、1932年の『愛に叛く者』で主演女優賞にノミネートされるなど、絶頂期を迎えます。

1930年から1933年にかけては、数多くの映画に出演し、1933年には『タイム』誌の表紙を飾るなど、ハリウッドを代表するスターとして活躍しました。しかし、人気絶頂の1934年、癌により45歳でこの世を去ります。

華やかなハリウッドの輝きを短期間で経験したドレスラー。彼女の功績は、死後四半世紀が経過した1960年、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームへの星形プレートの設置によって、永遠に刻まれることになりました。

主な出演作品には、『醜女の深情け』、『アンナ・クリスティ』、『惨劇の波止場』、『愛に叛く者』、『晩餐八時』、『酔ひどれ船』などがあります。これらの作品は、彼女の豊かな表現力と卓越した演技が遺憾なく発揮された、ハリウッド黄金期の貴重な記録となっています。 彼女の短いながらも輝かしいキャリアは、多くの映画ファンに今もなお語り継がれています。

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