マリ伯爵

マリ伯爵：スコットランド貴族の歴史と変遷

マリ伯爵（Earl of Moray [ˈmʌri]）は、スコットランド貴族の伯爵位であり、その歴史は複雑で、過去に5回創設されています。現存するのは1562年にジェームズ5世の私生児ジェームズ・ステュアートが叙せられた第5期のものです。マリ伯爵位の歴史を紐解き、その変遷と歴代当主について解説します。

マリの歴史

1130年にスコットランド王デイヴィッド1世によってスコットランド王国に併合されるまで、マリはモーマーと呼ばれる統治者によって統治されていました。スコットランド王位継承がタニストリー（能力主義的指名）であった時代には、マクベスが王位に就きましたが、彼はマリのモーマー・フィンレックとスコットランド王マルカム2世の娘ドウナダの子であったとされています。

スコットランド併合後も、マリはイングランド軍に占領されることが少ない地域であり、スコットランドの対イングランド抵抗運動において重要な拠点となりました。

第1期から第4期のマリ伯爵

スコットランド王ロバート1世は、1312年に甥にあたるトマス・ランドルフに最初のマリ伯位を与えました。初代マリ伯は、バノックバーンの戦いなどでロバート1世の指揮下で戦い、デイヴィッド2世の摂政を務めました。しかし、3代マリ伯ジョン・ランドルフが子を残さず暗殺されたため、初代マリ伯は廃絶しました。

その後、ダンバー氏族やスチュワート氏族が進出し、1372年にジョン・ダンバーが第2期のマリ伯に叙せられました。このマリ伯は、第1期のマリ伯領の沿岸部分を領土とし、高地部分はバカン伯爵アレグザンダー・ステュアートが獲得しました。しかし、この分割は戦乱を招き、第2期マリ伯は4代伯ジェームズ・ダンバーまで継承された後、その娘エリザベス・ダンバーが継承者となりました。

エリザベスの夫であるアーチボルド・ダグラスがマリ伯の称号を認められましたが、国王に反旗を翻して敗死し、称号を剥奪されました。その後、マリ伯領は王冠に戻り、ハントリー伯爵ゴードン氏族が支配力を伸ばしました。

1501年には、ジェームズ4世の私生児ジェームズ・ステュアートが第3期のマリ伯に叙せられましたが、継承者を残せなかったため、マリ伯領は王冠に返還されました。1549年には、第4代ハントリー伯爵ジョージ・ゴードンが第4期のマリ伯に叙せられましたが、メアリー女王と対立し、称号を剥奪されました。

第5期マリ伯爵

ジェームズ5世の私生児ジェームズ・ステュアートは、1562年に第5期のマリ伯に叙せられました。彼はメアリー女王の政治顧問となり、当初は男系男子に限られる爵位でしたが、後に女子も相続可能となりました。初代伯は女王との関係が悪化し、反乱を起こしてイングランドへ逃れましたが、女王が退位すると帰国して甥ジェームズ6世の摂政に就任しました。しかし、メアリー女王支持派に暗殺されました。

初代伯の娘エリザベス・ステュアートが第2代マリ女伯を継承し、その夫ジェームズ・ステュアートもマリ伯の称号を使用しました。2代女伯夫妻の長男ジェームズ・ステュアートは、母から3代マリ伯、父からドゥーン卿を継承し、以降ドゥーン卿がマリ伯の従属爵位に加えられました。

近代のマリ伯爵

5代伯アレクサンダー・ステュアートは、スコットランドの国務大臣を務めましたが、晩年にはジャコバイトの疑いをかけられて投獄されました。6代伯チャールズ・ステュアートは、準男爵に叙せられましたが、子供がなく準男爵位は廃絶しました。9代伯フランシス・ステュアートは、ステュアート男爵に叙せられたことにより、以降の当主は自動的に貴族院議員となりました。

17代伯モートン・グレイ・ステュアートの三男ジェームズ・ステュアートは、スコットランド大臣を務め、ステュアート子爵に叙せられました。2019年現在のマリ伯爵は、21代マリ伯ジョン・ステュアートです。

現当主の保有爵位

第21代マリ伯
第21代アバーネシー＝ストラサーン卿
第21代ドゥーン卿
第21代セント・コルム卿
* インヴァーネス州におけるステュアート城の第13代ステュアート男爵

マリ伯爵家は、スコットランドの歴史において重要な役割を果たしてきた貴族であり、その歴史は現代にも続いています。

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