マルクス・アントニウス・プリムス

マルクス・アントニウス・プリムス

マルクス・アントニウス・プリムス（Marcus Antonius Primus, 30年頃 - 81年以降）は、ローマ帝国の軍人として、激動の時代を生きました。

生涯

出自と家族

プリムスは、ガリアのトロサ（現在のフランス、トゥールーズ）で生まれました。彼の出自に関する詳しい情報は限られていますが、後の活躍から、一定の地位にあった家柄の出身であったと考えられます。

ローマ内戦以前

ネロ帝の時代、プリムスはローマで元老院議員を務めていました。しかし、不正行為が発覚し、ローマから追放されるという不名誉な経験をします。その後、ガルバ帝によって名誉を回復され、パンノニアに駐屯する第7軍団の指揮官に任命されました。この人事は、彼の軍事的な才能が認められた結果と言えるでしょう。

ローマ内戦

68年に始まったローマ内戦において、プリムスはウェスパシアヌスを支持しました。彼はイタリアへ進軍し、69年10月にはベドリアクムの戦いでウィテッリウス軍を打ち破るという大功を立てます。しかし、勝利の直後、クレモナを焼き討ちにするという非道な行為も行っています。その後、アペニン山脈を越えてローマへ進軍し、激しい抵抗を受けながらも市内への侵入に成功しました。この戦いでウィテッリウスは殺害され、プリムスは事実上、ローマの支配者となります。元老院は彼にコンスルの地位を与えようとしましたが、ローマ市内は混乱状態にあり、政治的な駆け引きが繰り広げられました。数日後、ガイウス・リキニウス・ムキアヌスがローマに進軍し、市内の混乱を鎮めます。プリムスはムキアヌスに服従を強いられ、不名誉な扱いを受けながらローマを去る事になりました。

内戦以後

プリムスのその後の消息は明確ではありません。しかし、詩人のマルティアリスが自身の作品で彼に言及していることから、ドミティアヌス帝の時代（81年 - 96年）までは生存していたと考えられています。

評価

歴史家のタキトゥスは、プリムスを以下のように評しています。「行動においては勇敢、演説は雄弁、他者を憎悪にかき立てるのには巧みであり、内乱、反乱の時代には隆盛する。強欲で浪費家、平和な時代には悪しき市民であり、戦争の時には軽んずる事のできぬ朋友であった」。この評価は、プリムスが有能な軍人でありながら、同時に危険な側面も持ち合わせていたことを示唆しています。彼の行動は、ローマ内戦という特殊な状況下において、功績と非道さが入り混じったものであったと言えるでしょう。

まとめ

マルクス・アントニウス・プリムスは、ローマ帝政初期の動乱期に活躍した軍人です。その生涯は、内戦における目覚ましい功績と、その後の失脚、そして歴史家による複雑な評価によって彩られています。彼の存在は、ローマ帝国の歴史における光と影を象徴していると言えるでしょう。

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