マルク・アントワーヌ・ロジエ

マルク＝アントワーヌ・ロージエの建築思想

マルク＝アントワーヌ・ロージエ（1713年1月22日 - 1769年4月5日）は、18世紀フランスの著名なイエズス会の司祭であり、特に建築理論において重要な役割を果たしました。彼は南フランスのプロヴァンス地方のマノスクに生まれ、啓蒙主義の時代背景の中で、ロココ様式に対する批判と古典主義の再評価を行ったことで知られています。

彼の代表作である『建築試論（Essai sur l’architecture）』は1753年に発表され、特に建築の根源的な形状に遡ることが主なテーマとなっています。ロージエは、建築の真の規範を「始原の小屋」と呼び、柱や梁、破風などの基本要素のみから構成されるシンプルな形態に立ち返ることが重要であると説きました。この考え方は、古典建築の理想を追求する上でも非常に影響力のあるものであり、第二版（1755年）で掲載された「始原の小屋」の扉絵はその後多くの建築家たちに参照されました。

ロージエの理論は、ウィトルウィウスの伝統的な建築論とは異なり、ギリシャ建築に限定されることなく、あらゆる文明の発展に普遍的に適用できる形で再構築されました。彼は、建築の各部が持つ意味を探求し、それを社会的文脈に結びつけて考えることを重視しました。また、建築の社会的責任についても深く考察し、その中で「品性（ビアンセアンス）」の概念を導入し、18世紀の時代背景に応じた施設の計画手法を提案しました。

『建築試論』は多くの言語に翻訳され、ヨーロッパを中心に広く読まれました。具体的には、彼の考え方は後の建築家たちに大きな影響を及ぼし、近代建築の基礎を築く要因の一つとなりました。特に、ロージエの提唱したシンプルな形態への回帰は、古典主義建築への新たな理解を提供し、その後の建築理論の発展にも寄与したのです。

このように、ロージエは古典主義の本来の意味を再定義し、その成果は今なお多くの建築家やデザイナーに影響を与えています。彼の業績は、建築の美学や機能、社会的責任に関する理解を深める上で欠かせないものとなっています。

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