マルタイの女

映画『マルタイの女』について

『マルタイの女』は1997年に公開された日本映画で、監督は伊丹十三です。この作品は、伊丹監督の遺作でもあり、警察用語の「マルタイ」（警護対象者）をテーマにしたストーリーが展開されます。

あらすじ

物語の主人公は女優の磯野ビワコ（演：宮本信子）。彼女は偶然にも弁護士夫婦が殺害される瞬間を目撃してしまい、危険な目に遭います。その後、ビワコは命を狙う集団の存在に気づき、警察による保護を受けることになります。事件の背後には宗教団体「真理の羊」が絡んでいます。

ビワコは警察に事情を聴かれた後、メディアの前で「裁判で証言する」と発言。彼女の命を守るため、2人の刑事が警護を担当します。一人はビワコの熱烈なファンであるミーハーな近松（村田雄浩）、もう一人は職務に堅実な立花（西村雅彦）で、性格やスタイルが真逆の2人が、ビワコの自由な行動に振り回される様子が描かれます。

登場人物とキャスト

ビワコの周辺には多くのキャラクターが登場します。彼女のマネージャーである小清水（近藤芳正）や、劇場プロデューサー、愛人関係にあるテレビ局の編成局長真行寺（津川雅彦）など、多彩なキャストによって物語が展開されます。また、警察側では立花と近松のコンビが重要な役割を果たし、コミカルな要素も含まれています。

緊迫する展開

物語が進む中で、教団の実行犯である大木（高橋和也）が逮捕され、ビワコの面通しが行われることで彼が犯人であることが確認されます。しかし、教団幹部はビワコに証言を止めさせようと脅迫を加え、次第に彼女は精神的に追い込まれていきます。

そして、ビワコの不倫が明るみに出ると、彼女は舞台を降板し、ショックから姿を消してしまいます。この時、教団に襲撃されるが、立花に救出されるシーンは緊迫感にあふれています。

最終決戦と決意

裁判が近づくにつれ、ビワコを乗せた護送車が教団の刺客に狙われます。激しいカーチェイスや戦闘の末、立花たちは教団の追っ手を振り切り、ビワコは裁判所に向かう決意を固めます。彼女は、自身の命を賭けて真実を証言することを選び、作品のクライマックスへと進みます。

公開時の反響と影響

本作は、公開された当時、オウム真理教事件を背景に持つ社会的な緊張感も反映しており、観客に強いインパクトを与えました。また、伊丹監督はこの映画を通じて、自身の体験や社会問題への関心を作品に織り込んでいます。

作品の評価

『マルタイの女』は伊丹映画として初めて刑事ものに挑戦した作品であり、その緊張感とユーモアが絶妙に組み合わさっています。観る者に思考を促すメッセージを持つ一方で、エンターテインメントとしても楽しめる内容となっています。

幻の主題歌

制作中には、伊丹が主人公ビワコをイメージした主題歌も書いていましたが、実際には使用されませんでした。後に、彼の妻である宮本信子がその歌を公開しました。

以上が『マルタイの女』の概要と特徴です。この映画は、伊丹十三監督の独自の視点が光る作品であり、彼の映画史における重要な位置を占めています。

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