マルドゥック・スクランブルとは？意味をやさしく解説

『マルドゥック・スクランブル』

冲方丁によるSF小説シリーズ。ハヤカワ文庫JAから刊行され、イラストは寺田克也が担当している。緻密な設定と迫力のあるアクションシーン、そして人間の業を描いた重厚な物語が特徴。

ストーリー

物語は、少女娼婦であるルーン＝バロットが、ショーギャンブラー、シェル・セプティノスの陰謀により命を落としかけるところから始まる。しかし、委任事件担当捜査官のイースターと、人語を解するネズミ型万能兵器ウフコックによって救出され、禁断の科学技術「マルドゥック・スクランブル09法」により一命を取り留める。

バロットは、高度な電子干渉能力「スナーク」を身につけ、イースター、ウフコックと共にシェルの犯罪を追うことになる。一方、シェルもまた、委任事件担当捜査官のボイルドを雇い、バロットを抹殺しようと画策する。かつてウフコックとパートナーだったボイルドは、過去の因縁とそれぞれの思惑が絡み合い、激しい戦いが繰り広げられる。

バロットたちは、シェルの真の履歴データが、彼の経営するカジノに隠されていることを突き止め、四百万ドル以上のチップを稼ぎ、データを手に入れるべくカジノに乗り込む。

登場人物

ルーン＝バロット

本作の主人公。少女娼婦として生きていたが、シェルの陰謀により命を落としかける。マルドゥック・スクランブル09法により蘇生し、常人離れした身体能力と電子機器を自在に操る能力を得る。物語を通して、自身の存在意義と戦う意味を見出していく。

声 - 林原めぐみ（劇場アニメ版）

ウフコック・ペンティーノ

人語を解する金色のネズミ型万能兵器。体を複数の次元に分割し、亜空間に貯蔵された物質で様々な兵器や道具に変形できる。かつてはボイルドとパートナーだったが、彼の濫用が原因で決別。バロットとイースターをサポートする。誠実で思慮深い性格だが、悩みやすい一面も。

声 - 八嶋智人（劇場アニメ版）

ドクター・イースター

委任事件担当捜査官。元宇宙戦略研究所の研究者。バロットの人工皮膚の技術やボイルドの擬似重力技術の開発者でもある。バロットを救出し、彼女と共にシェルの犯罪を追う。以前は派手な容姿だったが、バロットの意見を取り入れ、服装や髪型を改めた。

声 - 東地宏樹（劇場アニメ版）

シェル・セプティノス

ショーギャンブラーで、オクトーバー社の下で複数のカジノを経営する。少女娼婦であったバロットをスカウトし、自身の専属娼婦とするが、後に殺害しようとする。冷酷で残忍な性格。

声 - 中井和哉（劇場アニメ版）

ディムズデイル・ボイルド

委任事件担当捜査官。かつてはウフコックのパートナーだったが、麻薬事件をきっかけに決別。現在はオクトーバー社に雇われ、バロットの抹殺を目論む。過去のトラウマから、感情を失っている。

声 - 磯部勉（劇場アニメ版）

その他の登場人物

クリーンウィル・ジョン・オクトーバー：オクトーバー社の社長。

誘拐屋：臓器フェチの集団。ボイルドに雇われバロットを襲撃する。

ミディアム・ザ・フィンガーネイル：指フェチの元軍人。バロットに倒され、機械化して復活。

Mミンチ・ザ・ウィンク：眼球フェチの元パイロット。レアと同士討ちさせられる。

レア・ザ・ヘア：髪フェチのナイフ使い。バロットに倒され自爆。

ウェルダン・ザ・プッシーハンド：性器フェチの畜産業者。バロットに倒される。

フレッシュ・ザ・パイク：乳房フェチの情報担当。ボイルドに射殺される。

プロフェッサー・フェイスマン：宇宙戦略研究所の創始者の一人。研究所を「楽園」と呼ぶ。

トゥイードルディ：重い障害を持つ青年。トゥイードルディムの意識を移植することで体を動かす。

トゥイードルディム：イルカ。トゥイードルディの言語意識で発話する。

ベル・ウィング：カジノのスピナー。バロットに「女としての強さ」を教える。

マーロウ・ジョン・フィーバー：カジノのディーラー。バロットに敗北。

アシュレイ・ハーヴェスト：最強のディーラー。バロットとの勝負を通して彼女の成長を促す。

用語

マルドゥック市

本作の舞台となる工業都市。貧富の差が大きく、スラム街も存在する。

三博士

宇宙戦略研究所の創立者。フェイスマン、サラノイ・ウェンディ、クリストファー・ロビンプラント・オクトーバー。

マルドゥック・スクランブル-09法

人命保護を目的とした緊急法令。保護証人の人命保護のため、禁じられた科学技術の使用を認める。

委任事件担当捜査官

事件当事者からの委任を受け、事件の捜査、解決を行う者。俗称は事件屋。

制作背景

1996年頃から執筆が開始され、「武器そのものの存在意義と、それを使うことの意味」がテーマとして描かれている。

メディア展開

小説

『マルドゥック・スクランブル』シリーズは、以下の作品が刊行されている。

- 『マルドゥック・スクランブル』
- 『マルドゥック・ヴェロシティ』
- 『マルドゥック・アノニマス』
- 『マルドゥック・フラグメンツ』
- 『マルドゥック・ストーリーズ』

短編として「マルドゥック・スクランブルプレストーリイ」が二編発表されている。

漫画

- 『別冊少年マガジン』で大今良時による漫画版が連載された。
- 『NEMESIS』で皆本形介によるスピンオフ作品『マルドゥック・デーモンズ』が連載された。

アニメ

- GONZOによるOVAが制作中止となった。
- GoHands制作で劇場アニメ三部作が公開された。

その他

- 劇場アニメ版では、声優の林原めぐみが主人公バロット役を熱演。アフレコでは3つのマイクを使用する特殊な方法が用いられた。
- 原作者の冲方丁は、アニメ制作において、自身の想像を超えるスタッフの熱意に感銘を受けたと語っている。

マルドゥック・スクランブル