マレット (髪型)

マレットヘア：時代を超えたヘアスタイルの軌跡

マレットヘアとは、前髪やトップは短く、襟足だけを長く伸ばした特徴的なヘアスタイルです。多くの場合、サイドは刈り上げられています。一見奇抜なこのヘアスタイルは、1970年代から80年代にかけて世界中で爆発的な流行を巻き起こし、その後も独特の存在感を保ち続けています。

流行の始まりと隆盛

マレットヘアの流行は、1970年代初頭に遡ります。当時、襟足だけを長く伸ばしたヘアスタイルが流行の兆しを見せ始め、グラムロック全盛期には、デビッド・ボウイなどの人気ミュージシャンがマレットヘアを象徴的に取り上げたことで、その認知度と人気は一気に上昇しました。70年代末から80年代にかけては、マイケル・ボルトンやデュラン・デュランといったミュージシャン、そして『冒険野郎マクガイバー』の主人公アンガス・マクガイバーなど、多くの著名人がマレットヘアをしており、その人気は頂点に達しました。スパイクヘアやブロンドハイライトと並んで、80年代の象徴的なヘアスタイルの一つと言えるでしょう。

ビースティー・ボーイズとマレットヘアの再解釈

1994年、アメリカのヒップホップグループ、ビースティー・ボーイズが『Mullet Head』という楽曲を発表しました。この楽曲において、マレットヘアはユーモラスに、時には皮肉的に扱われ、新たな注目を集めます。翌年には、彼らが発行する雑誌『グランドロイヤル』でマレットヘアを特集。歴史や著名人の写真などを掲載したことで、マレットヘアは「ダサい」ヘアスタイルの代名詞として若者文化に深く浸透していきました。

マレットヘアの現在

ビースティー・ボーイズによる再解釈にも関わらず、マレットヘアは現在でも根強い人気を誇ります。中欧や東欧では若者の間で支持されており、アメリカではブルーカラー層やカントリーミュージックファン、ハードロックファン、アメリカンフットボールやアイスホッケーの選手やファンなど、特定の層に好まれています。レズビアンの間にも支持者がいると言われています。また、サッカー選手やオージーフットボール選手など、世界各国のプロスポーツ選手にもマレットヘアを見ることができます。日本においても、80年代には玉置浩二や松崎淳美など多くの著名人がマレットヘアにしており、現在もプロゴルファーの尾崎将司やプロレスラーの天山広吉など、多くの有名人がマレットヘアを継続しています。

まとめ

マレットヘアは、時代を超えて存在感を示し続けるヘアスタイルです。その流行の経緯、文化的背景、そして現在に至るまでを理解することで、このヘアスタイルの持つ独特の魅力と多様性を再認識することができます。単なる「ダサい」ヘアスタイルとして片付けるのではなく、時代と文化、そして個性を反映するヘアスタイルとして捉え直すことが重要です。マレットヘアは、流行の移り変わりの中で、常に人々の関心を集め、議論を巻き起こしてきた、まさに時代を象徴するヘアスタイルなのです。

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