マレーズトラップ

マレーズトラップについて

マレーズトラップ（Malaise trap）は、昆虫採集において役立つトラップの一つです。スウェーデンの昆虫学者、ルネ・マレーズにちなんで名付けられたこのトラップは、特に飛翔性昆虫、特に双翅目（ハエ目）や膜翅目（ハチ目）を捕獲するために効果的です。このトラップは、テントのような構造を持ち、飛来した昆虫を効果的に集めることができます。

概要

マレーズトラップは、テント型に設置されたネットを利用し、飛翔する昆虫を捕獲することを目的としています。一般的には、トラップの上部に保存液が入ったビンが取り付けられており、飛翔性昆虫は障害物に当たると上昇する特性があるため、このビン内に誘導されるのです。このトラップは、高い飛翔能力を持つ昆虫を収集する際に特に有効で、天候の影響を受けにくいため、定量的および定性的な調査が可能です。

歴史

マレーズトラップが開発される前の1916年には、J.C.ホッジがウィンドウ・ボックス・トラップを考案しましたが、これほど普及することはありませんでした。ルネ・マレーズは、長期の採集旅行中にテント内に入った昆虫が屋根の隅に集まることに気づき、彼の観察から1934年にミャンマーでテント型捕虫トラップを開発しました。マレーズは1937年にそのトラップを学術雑誌に発表し、これが後のマレーズトラップの原型となったのです。

マレーズの原型はネット製のテントと、同じ素材を使った小部屋、そして保存液が入った容器が一体となった構造でした。このトラップは作成が難しいため、後に様々な研究者により改良され、広く普及しました。中でもよく知られているのは、H.タウンズが考案したタウンズ型、グレシット夫妻が提案したグレシット型、そしてその中間形状であるバトラー型、カナダ農務省による三角型です。

さらに、炭酸ガスに誘引される昆虫を増やすためにガスベイトを使用するトラップや、ライトトラップと組み合わせたものもあります。日本では1964年に平嶋義宏が八丈島でグレシット型のトラップを使用し、これが日本におけるマレーズトラップの初使用例となりました。

構造と設置方法

マレーズトラップの基本的な構造は、大きく4つの部位で構成されています。まず、昆虫をトラップ内に導くための開口部、次に飛翔を妨げるための壁部、さらに昆虫を逃がさないようにするための屋根部、そして捕虫器です。各タイプには特徴があります。

• - タウンズ型：十字型の壁部を持ち、四角錐型の屋根があります。四方からの昆虫を捕えることが可能ですが、製作や設置が手間です。
• - グレシット型：壁部が1枚のネットで、筒型で設置が簡単です。2方向からのみ昆虫を捕獲できます。
• - バトラー型：蚊帳を改良したもので、小型のタウンズ型です。
• - 三角型：直角三角形のネットで構成されており、狭い場所にも設置可能な利点があります。

これらの構造は、テトロンやポリエステルなどの化学繊維で作られたネットを使用し、色は白や黒、目立つ色も使用されます。

設置方法

マレーズトラップは、昆虫の移動が活発な場所に設置する必要があります。一般的には林縁や川の近く、山道の脇などが適しています。設置する際には、トラップ内の昆虫が明るい屋根を目指すため、捕虫器が太陽光に向くように配置し、屋根のタルミをなくすことも重要です。これにより、捕獲効率が向上します。

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