マレー・ヘッド

マレー・ヘッドは、英国出身の多才なアーティストであり、俳優および歌手として長きにわたり活躍しています。特に、ミュージカル作品からの二つの大ヒット曲が、彼の名を世界中に広める大きなきっかけとなりました。

キャリアの始まり

幼い頃から作曲に親しみ、1960年代半ばにはロンドンで音楽活動を本格化させ、レコード契約を獲得しました。ウエスト・エンドでのミュージカル『ヘアー』への出演など、一定の経験は積んでいたものの、当初は広く注目されるまでには至っていませんでした。

『ジーザス・クライスト・スーパースター』でのブレイク

転機となったのは、作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーと作詞家ティム・ライスの手によるロックオペラ『ジーザス・クライスト・スーパースター』です。アルバム制作にあたり、マレー・ヘッドは裏切り者として知られるイスカリオテのユダ役に抜擢されました。このアルバムからシングルカットされた「スーパースター」は、1971年にアメリカの主要チャートであるBillboard Hot 100で14位を記録するヒットとなり、彼の名前を音楽界に強く印象付けました。

俳優としての活動

音楽と並行して、マレー・ヘッドは俳優としてもキャリアを築きました。1966年の映画『The Family Way』でスクリーンデビューを果たし、1971年にはピーター・フィンチやグレンダ・ジャクソンと共演した映画『日曜日は別れの時』で主要な役柄を演じ、アカデミー賞にも複数部門でノミネートされたこの作品でその演技力を示しました。

一時的な沈黙と再びの注目

初期の成功の後、続く約10年間は比較的目立たない時期が続きました。しかし、1975年に発表したシングル「Say It Ain't So, Joe」は、後にザ・フーのリードボーカリストであるロジャー・ダルトリーによってカバーされるなど、音楽界において確かな足跡を残しました。このタイトルは、アメリカの野球史における有名な出来事に関連する言葉から取られています。この時期には、ラジオドラマやテレビシリーズにも出演し、俳優としての活動も継続していました。

『チェス』での世界的な成功

1980年代半ば、マレー・ヘッドは再び大きな注目を集めることになります。元ABBAのメンバーであるベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースが楽曲を手がけたミュージカル『チェス』のコンセプトアルバムに参加したのです。このアルバムに収録された彼のボーカル曲「ワン・ナイト・イン・バンコック」は、世界中で記録的なヒットとなりました。西ドイツ、スイス、オーストラリアでチャートの1位を獲得し、アメリカとカナダでも3位、イギリスでも12位を記録するなど、国際的なアンセムとなりました。この曲は、1996年に別のミュージカル曲が登場するまで、アメリカとドイツのラジオでヒットした最後のブロードウェイ/ウエスト・エンド関連楽曲の一つとして記憶されています。

舞台への出演と現在

この成功を受けて、1986年にはロンドンで初演されたミュージカル『チェス』のウエスト・エンド公演で、コンセプトアルバムと同じくアメリカ人チェスチャンピオン、フレデリック・トゥルンパ役を演じました。惜しくも声帯の問題により途中で降板しましたが、公演自体は数年間続けられました。その後もマレー・ヘッドは精力的に音楽制作を続けており、多数のスタジオアルバム、ライブアルバム、コンピレーションアルバムを発表しています。俳優としても活動を継続しており、英国を代表するアーティストの一人として、音楽と演劇の両分野でその才能を発揮し続けています。ちなみに、俳優として活躍するアンソニー・ヘッドは彼の弟にあたります。

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