マロー・オブライエン (初代トモンド伯爵)

マロー・オブライエン：初代トモンド伯爵の生涯

マロー・オブライエン（Murrough O'Brien, 1st Earl of Thomond）は、16世紀のアイルランドに生きた人物であり、最後のトモンド王として知られています。彼はイングランド王ヘンリー8世に降伏し、トモンド伯爵およびインチクィン男爵の爵位を授与されました。彼の生涯は、当時のアイルランドにおける政治的変動とイングランドの影響を色濃く反映しています。

生い立ちと王位継承

マロー・オブライエンは、トモンド王トゥーロッホ・オブライエンとレインリット・マクナマラの次男として生まれました。1539年に兄のコナー・オブライエンが亡くなると、その息子であるドノーを差し置いてトモンド王位を継承しました。この王位継承は、当時のアイルランドにおける権力闘争の一端を示しています。

イングランドへの降伏と爵位授与

マロー・オブライエンは、当初イングランドのアイルランド支配に対抗していましたが、最終的にはヘンリー8世の「降伏と再授封」政策を受け入れました。この政策は、アイルランドの支配階級にイングランド王への忠誠を誓わせ、その代わりに領土を再授封するというものでした。1543年、マローはトモンド伯爵とインチクィン男爵の爵位を授与されました。特筆すべきは、トモンド伯爵位が甥のドノーに継承されるという特別な継承規定が付いていたことです。これは、イングランドがアイルランドの支配構造に介入した明確な例と言えるでしょう。

家族

マロー・オブライエンは、ナイト・オブ・グリントマス・フィッツジェラルドの娘エレノア・フィッツジェラルドと結婚し、多くの子をもうけました。長男のダーモッド・オブライエンは第2代インチクィン男爵位を継承し、他の息子たちもそれぞれ歴史に名を残しています。娘たちの中には、有力なアイルランドの氏族と婚姻関係を結んだ者もおり、マローの家族はアイルランド社会において重要な役割を果たしました。

長男：ダーモッド・オブライエン（第2代インチクィン男爵）
次男：タイゲ・マクマロー・オブライエン
三男：ドノー・マクマロー・オブライエン
四男：トーロッホ・オブライエン
長女：ホノラ・オブライエン
次女：アーニェ・オブライエン
三女：マーガレット・オブライエン
四女：スラニー・オブライエン
* 五女：ラネルト・オブライエン

死去とその後

マロー・オブライエンは1551年に亡くなりました。彼の死後、トモンド伯爵位は甥のドノーが継承し、インチクィン男爵位は長男のダーモッドが継承しました。マロー・オブライエンの生涯は、アイルランドの伝統的な支配構造がイングランドの圧力によって変容していく過程を象徴しています。

マロー・オブライエンは、アイルランド史における重要な転換期を生きた人物であり、彼の決断と行動は、その後のアイルランドの歴史に大きな影響を与えました。

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