マンガラ (インド神話)

マンガラは、インド占星術において重要な位置を占める九曜（ナヴァグラハ）の一つであり、火星を神格化した存在です。サンスクリット語で「吉祥」を意味し、その名が示す通り、幸運や繁栄をもたらすとされています。また、火の神であるアグニと同一視されることもあり、その力強さと情熱を象徴しています。

マンガラの誕生には、いくつかの異なる神話が存在します。一つの説では、マンガラはシヴァ神の血と汗から生まれたとされています。この説は、マンガラの持つ激しい性質と、戦いにおける勇敢さを強調しています。一方、別の説では、ヴィシュヌ神がヴァラーハ（猪）の姿で現れ、海底に沈んだ大地（ブーミまたはプリティヴィー）を救い出した際に、ヴィシュヌ神と大地の女神ブーミとの間に生まれたとされています。この説では、マンガラが大地の子（bhauma）と呼ばれる理由を説明し、彼の持つ大地の力強さを示唆しています。

マンガラの姿は、一般的に赤い肌で、4本の腕を持ち、牡羊に乗っていると描写されます。この赤い肌は、火星の赤色を象徴しており、彼の持つ情熱とエネルギーを表しています。4本の腕は、彼の持つ多面的な能力を示し、様々な武器を持つ姿で描かれることもあります。また、牡羊は彼の乗り物であり、その勇敢さと力強さを象徴しています。

興味深いことに、マンガラはカールッティケーヤ（戦いの神）と同一視されることもありますが、図像学的には異なる存在として区別されています。カールッティケーヤは通常、孔雀に乗って描かれますが、マンガラは牡羊に乗って描かれるため、両者を区別することができます。また、マンガラはアンガーラカ（aṅgāraka）とも呼ばれます。これは文字通り「炭」を意味し、火星の燃えるような性質を強調しています。

マンガラは、インド占星術において、勇気、エネルギー、行動力、情熱などを司る惑星として重要視されています。彼の配置は、個人の性格や運命に大きな影響を与えるとされており、占星術の分析において重要な要素となります。特に、火星が強い影響を与える時期は、注意が必要とされ、そのエネルギーを建設的に活用することが重要とされています。マンガラは、インドの文化や宗教において、単なる惑星としての存在を超え、神格化された力強い存在として崇められています。

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