マングラー

『マングラー』（The Mangler）

1995年に製作されたアメリカ合衆国のホラー映画。著名なホラー作家であるスティーヴン・キングが1972年に発表した短編小説『人間圧搾機』を原作としており、ホラー映画史におけるカルト的な傑作『悪魔のいけにえ』などを手掛けたトビー・フーパーが監督を務めた作品である。

あらすじ

物語の舞台は、とある町の「ブルー・リボン洗濯工場」。この工場で働く従業員のシェリーが、巨大なリネンプレス機「マングラー」の作業中に誤って手を挟まれ、重傷を負う事故が発生する。この際、機械に付着した彼女の血がきっかけとなり、長年このプレス機に宿っていたとされる悪魔的な存在が覚醒してしまう。一度人間の血の味を覚えたマングラーは、まるで自我を持ったかのように工場内の人々を次々と無慈悲に巻き込み、凄惨な殺人を繰り返していく。事態は単なる機械の故障を超えた異常事態として認識され、地元のジョン・ハントン刑事が捜査に乗り出す。彼は友人のマークと共に、正気を失い暴走する殺人機械、そしてその背後に潜む悪魔の力を止めようと、命がけの戦いに挑むことになる。

製作と評価

ホラー映画界で名の知れたトビー・フーパーが監督を務め、原作がスティーヴン・キング作品であることから、公開前には一定の期待が寄せられた。しかし、蓋を開けてみれば、本作は批評家から極めて厳しい評価にさらされることとなる。映画批評の集計サイトであるMetacriticでは、10人の批評家からのレビューに基づいた加重平均スコアが、100点満点中わずか8点という著しく低い数字を記録した。多くの批評家は、物語の荒唐無稽さ、演出の稚拙さ、チープな特殊効果などを酷評し、原作の持つ不気味さやサスペンスを全く活かせていないとの意見が大勢を占めた。製作陣には、監督・脚本のトビー・フーパーのほか、スティーブン・ブルックス、ピーター・ウェルベックが脚本として参加。特殊効果（SFX）もスティーブン・ブルックスが担当し、特異な機械デザインはウィリアム・フーパーが手掛けた。音楽はバーリントン・フェロングが担当している。

シリーズ作品

本作の後、直接的な続編とは言えないものの、『マングラー』の名を冠した二つの続編が製作された。しかし、これらの作品も批評的な評価は同様に低い傾向にある。

『マングラー2』（The Mangler 2）: この続編では、オリジナルのプレス機との直接的な物語上の繋がりは薄い。悪魔的な存在がリネンプレス機から離れ、現代の舞台である最新の警備システムを備えた学園のコンピューターネットワークに取り憑き、デジタル空間を介して生徒や教師を襲うという設定になっている。物理的な機械から情報システムへと恐怖の対象が変化したが、作品としての評価は芳しくなかった。
『スライサー』（The Mangler Reborn）: こちらの作品では、オリジナルの舞台であったブルー・リボン洗濯工場が閉鎖され、解体されたマングラーのプレス機の一部が、異常な嗜好を持つ人物の手に渡るという設定が描かれる。その異常者によってプレス機のパーツが組み替えられ、より小型で動的な殺人マシン「スライサー」として再構築される。再び物理的な機械が恐怖の対象となるが、この作品も前二作と同様に批評的な成功を得ることはできなかった。

スティーヴン・キング原作、トビー・フーパー監督という組み合わせにも関わらず、評価が振るわず、広く認知されるカルト映画ともなりえなかった本作は、ホラー映画史における特異な一例として語られることがある。意思を持つ、あるいは悪魔に取り憑かれた機械が人間を襲うというコンセプト自体は、ホラー作品で繰り返し描かれる普遍的なテーマであり、本作もその系譜に位置づけられる試みであったと言えるだろう。

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