マンサン

マンサンとは

マンサン（Mansun）は、1995年にイギリスのチェスターで結成されたロックバンドです。ブリットポップ・ムーブメントが終焉を迎える頃に登場し、その後の英国音楽シーンにおいて独自の存在感を放ちました。グラムロック、プログレッシブ・ロック、ニュー・ウェイヴといった多様な音楽要素を融合させた、耽美的で知的なギターロックを特徴としています。

結成から黎明期

バンドの核となるポール・ドレイパー（ボーカル、ギター）とストーヴ・キング（ベース）は、印刷会社での同僚でした。デヴィッド・ボウイやABC、デュラン・デュランといったアーティストへの共通の嗜好が二人の音楽的な結びつきを深めます。週末には共にライブハウスに通ったり、楽器演奏に励んだりしながら、バンド結成を志しました。そこに、二人が通い詰めたパブのバーテンダーだったドミニク・チャド（ギター、コーラス）が加わり、トリオ編成で活動を開始します。当初は「グレイ・ランターン」という名前で活動していましたが、後にチャールズ・マンソンにちなんだ「マンソン」へと改名。しかし、チャールズ・マンソン本人が名前の権利を持っていたため、最終的に「マンサン」に落ち着きました。

1995年8月、彼らは自主レーベルから限定1000枚のシングル「テイク・イット・イージー・チキン」をリリースし、すぐに完売。この初期の作品は、BBCラジオの著名なDJたち、スティーヴ・ラマックとジョン・ピールの注目を集めることになります。その後、イギリスのパーロフォン、アメリカのEpic Sony（日本は東芝EMI）といった大手レーベルとの契約を獲得しました。この頃にはドラマーのカールトン・ヒバート、プログラマーのマーク・スウィナトンも一時的に在籍していましたが、後に脱退。様々なドラマーが参加・離脱を繰り返した後、1996年10月にアンディ・ラスボーン（ドラム）が正式加入。これにより、解散まで続く4人組のラインナップが完成しました。

『アタック・オブ・ザ・グレイ・ランターン』：鮮烈なデビュー

1995年から1997年にかけて複数のEPを精力的にリリースした後、1997年2月に待望のファースト・アルバム『アタック・オブ・ザ・グレイ・ランターン』を発表しました。このアルバムは、ポール・ドレイパー自身がプロデュースを担当。初期のパンキッシュなサウンドから一転し、多様なジャンルを取り込んだ耽美的で華麗なギターロックを展開しました。その革新的な音楽性は高い評価を獲得し、音楽誌では「オアシス以来の最高のデビュー作」と称賛されるなど、ブリットポップ終焉期のシーンに鮮烈な印象を残します。商業的にも成功を収め、初登場で全英アルバムチャート1位を獲得しました。ポール・ドレイパーは、アルバムにコメディ番組に影響を受けたコンセプトが含まれていると説明しています。

『SIX』：深遠なる探求

1stアルバムの成功後、バンドはセカンド・アルバムの制作に取りかかります。しかし、曲作りは難航。ポール・ドレイパーはスランプを乗り越えるため、哲学書や文学作品などからインスピレーションを得て歌詞を書き上げました。1998年9月にリリースされたセカンド・アルバム『SIX』は、タイトル通り全英6位にランクイン。前作に続き、ポール・ドレイパーがプロデュースを手がけています。しかし、この作品は7〜8分を超える長尺曲を含む、前作を遥かに凌駕するプログレッシブで実験的なサウンドへと深化しており、その複雑怪奇な音楽性はプレスの間で賛否両論を巻き起こしました。本作からは、バンド史上最高のヒットとなったシングル「レガシー」（全英7位）や、「ビーイング・ア・ガール」が生まれています。

『リトル・キックス』：作風の転換

『SIX』発表後の長期ツアーに疲弊したバンドは、一度活動を休止します。ポール・ドレイパーとドミニク・チャドはスペインで共同生活を送りながら、アコースティックギター中心で楽曲制作を行いました。また、レーベル側の意向もあり、初めて外部プロデューサーとしてヒュー・パジャム（XTC、ポリスなどを担当）を起用。レコーディングはデヴィッド・ギルモア（ピンク・フロイド）所有のスタジオで行われました。2000年8月に発表されたサード・アルバム『リトル・キックス』は、複雑で内省的な前作とは対照的に、ストレートでメロウなラブソングが多くを占めるという劇的な変化を見せました。しかし、この作風の転換はリスナーやプレスには必ずしも受け入れられず、全英12位と順位を落とし、商業的、批評的に苦戦しました。メンバー自身も、キーボード多用によるサウンドの変化に否定的な意見を持つ者もいました。このアルバム発表後には、日本のサマーソニックの第1回に出演しています。

崩壊、そして解散へ

『リトル・キックス』発表後、バンドは新たな楽曲制作への意欲を見せ、次なる作品のリリースを目指していました。しかし、バンドを取り巻く状況は悪化の一途をたどります。ベーシストのストーヴ・キングの金銭問題による脱退、ポール・ドレイパーやドミニク・チャドの体調不良や怪我など、様々なアクシデントが重なります。制作は遅延し、メンバー間の関係も悪化していきました。2002年には「The Masons」名義でシークレットギグを行い、新作に収録予定だった楽曲も披露しましたが、状況は好転せず。長引く制作の遅れと様々な問題を抱えたまま、結局4枚目のオリジナル・アルバムが完成することはありませんでした。そして、2003年 5月2日、マンサンは公式に解散を発表しました。

解散後の展開

解散後、特に完成に至らなかった4thアルバムの音源化を望む世界中のファンからの強い要望に応え、2004年にはポール・ドレイパー主導のもと、未発表音源やBサイド曲などを集めた3枚組コンピレーション『クレプタメイニア』がリリースされました。2006年にはベスト・アルバム『レガシー：ザ・ベスト・オブ・マンサン』も発売。ポール・ドレイパーはその後ソロ活動を開始し、現在に至ります。他のメンバー、ドミニク・チャド、ストーヴ・キング、アンディ・ラスボーンは、プロのミュージシャンとしての活動からは距離を置き、それぞれの道を歩んでいます。

近年のリイシュー活動

2017年、Kscopeレーベルがマンサンの全カタログを取得したことを発表し、大規模なリイシューキャンペーンを開始しました。これまでに『アタック・オブ・ザ・グレイ・ランターン』や『SIX』といったオリジナル・アルバムのリマスター盤に加え、未発表音源やレア音源を含む豪華なボックスセット『Closed for Business』などがリリースされており、再びマンサンへの注目が集まっています。

主なメンバー

ポール・ドレイパー（Paul Edward Draper） - ボーカル、ギター
ドミニク・チャド（Dominic Chad） - ギター、コーラス
ストーヴ・キング（Stove King） - ベース
アンディ・ラスボーン（Andie Rathbone） - ドラム

ディスコグラフィ（主要作品）

アルバム
『アタック・オブ・ザ・グレイ・ランターン』 (Attack of the Grey Lantern) - 1997年全英1位
『SIX』 (Six) - 1998年全英6位
『リトル・キックス』 (Little Kix) - 2000年全英12位
『クレプタメイニア』 (Kleptomania) - 2004年全英135位
『レガシー：ザ・ベスト・オブ・マンサン』 (Legacy: Best of Mansun) - 2006年全英144位

主なシングル（英国盤）
Egg Shaped Fred (One EP) - 1996年全英37位
Take It Easy Chicken (Two EP) - 1996年全英32位
Stripper Vicar (Three EP) - 1996年全英19位
Wide Open Space (Four EP) - 1996年全英15位
She Makes My Nose Bleed (Five EP) - 1997年全英9位
Taxlo$$ (Six EP) - 1997年全英15位
Closed for Business (Seven EP) - 1997年全英10位
Legacy (Eight EP) - 1998年全英7位
Being a Girl (Part One) (Nine EP) - 1998年全英13位
Negative (Ten EP) - 1998年全英27位
Six (Eleven EP) - 1999年全英16位
I Can Only Disappoint U (Twelve EP) - 2000年全英8位
Electric Man (Thirteen EP) - 2000年全英23位
Fool (Fourteen EP) - 2001年全英28位
Slipping Away - 2004年全英55位

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