マンソン住血吸虫

マンソン住血吸虫について

マンソン住血吸虫（学名：Schistosoma mansoni）は、住血吸虫科の一種で、主に淡水巻貝を中間宿主とし、人間や他の動物に寄生することにより腸管住血吸虫症を引き起こします。この虫の名前は、スコットランド出身の医師パトリック・マンソンに由来し、彼が台湾でこの寄生虫を発見したことにちなんでいます。

形状と構造

この吸虫は細長い形状を持ち、雄雌異体で存在しています。成虫の雄は約1センチメートルの長さで白色、雌はより長く、灰色をしており、体の大部分を生殖器が占めています。また、この虫は消化器系において特異な構造を持っており、肛門が存在しない点が注目されます。虫卵は黄褐色で、側面に小さな突起があります。

生活環

マンソン住血吸虫の生活環は、虫卵が糞便を通じて環境中に排出されることから始まります。水中では孵化し、ミラシジウムと呼ばれる幼虫に成長し、そこから巻貝に感染します。ミラシジウムは貝の体内に侵入し、様々な変態を経た後、セルカリアという次の幼虫段階に移行します。この幼虫は水中で自由に泳ぎ、終宿主となるヒトや動物に接触することで、皮膚を経由して体内に入り込みます。

寄生したセルカリアは皮膚に侵入すると、変態しシストソミューラとなり、血流に乗って肝臓に到達します。そこでつがいとなり、腸間膜静脈に移動して産卵を開始します。雌は雄に抱えられた状態で寄生して生殖活動を行います。

ゲノムと遺伝

マンソン住血吸虫のゲノムサイズは約270メガ塩基ペアであり、GC含量は34%です。ゲノムの四割は反復配列で構成され、染色体は8対あります。その中の1対は性染色体で、受精時に染色体によって性が決定します。この特徴は、哺乳類とは異なり、同型の染色体（ZZ）が雄、異型の染色体（ZW）が雌となります。

2009年には、この寄生虫のゲノムの解析が進み、タンパク質分解酵素の多様性と、生合成能力の欠如が明らかにされました。

分布と感染

マンソン住血吸虫は、アフリカ、中東、カリブ海沿岸、南米など非常に広範な地域に分布しており、世界中で約8000万人がこの感染症にかかっているとされます。治療にはオキサムニキンが用いられますが、アフリカ株は南米株に比べて耐性を持つことが報告されています。

以上のように、マンソン住血吸虫はその形態、生活環、ゲノム構造、そして広範な感染範囲において多様性に富んだ寄生虫であり、感染症の一因となる重要な生物です。

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