マンソン裂頭条虫

マンソン裂頭条虫について

概要

マンソン裂頭条虫（学名：Spirometra mansoni）は、裂頭条虫目に属し、裂頭条虫科の一種です。この虫は、主に食肉目の動物、小腸に寄生し成虫として生活しますが、ヒトには稀に成虫としての発育は見られず、幼虫であるマンソン孤虫が主に皮下や臓器に寄生し、マンソン孤虫症という感染症を引き起こします。

形態

成虫の体は1から2メートルの長さがあり、幅は約1センチメートルです。その形態は、1000個以上のストロビラから構成されており、前方には未熟片節、後方には成熟片節が見受けられます。虫卵は長さが50から70μm、幅は30から45μmの褐色で、左右非対称なラグビーボールの形をし、一端には小蓋があり、卵細胞と卵黄細胞が含まれています。

生活環

マンソン裂頭条虫の生活環は、複数の宿主を経て成虫となります。第一中間宿主はケンミジンコであり、これを食べた第二中間宿主には、カエルやヘビ、亀、ライギョ、ドジョウ、スッポンなどがあります。その第二中間宿主がさらに終宿主である猫や犬などに捕食されることで、成虫が小腸に寄生する仕組みです。終宿主から放出された虫卵は水中で孵化し、次の宿主へと進む一連の過程が続きます。特に、ヘビは待機宿主としての役割も果たします。

分布

マンソン裂頭条虫は、主にアジアを中心に分布し、オセアニア、アフリカの東海岸、そしてヨーロッパの一部にも存在します。日本国内では、猫の感染率が高く、地域によっては30から45%の感染率となることもありますが、犬ではほとんどの地域で数パーセントに留まっています。都市部では中間宿主が減少しているため、感染事例は少なくなっており、地方都市や郊外での発生が見られます。日本国内では、ヒトのマンソン孤虫感染が約470例報告されています。

分類

21世紀に入り、長らく扁形動物門条虫綱擬葉目に分類されてきたマンソン裂頭条虫は、擬葉目の再分類により、裂頭条虫目裂頭条虫科に振り分けられることとなりました。

近縁種

この虫には、アジア裂頭条虫（Spirometra asiana）という近縁種が存在し、こちらはやや大きめで、特にプレロセルコイドが顕著に大きい特徴があります。

診断・治療・予防

マンソン裂頭条虫による症状は高くはないものの、成虫が小腸に寄生すると、頭節の固着により小腸壁が損傷し貧血が起こることもあります。猫では重い症例の場合、下痢や栄養不良、成長不良が見受けられることもあります。ヒトでは、皮下に無痛性やかゆみを伴う腫瘤が形成され、その腫瘤は移動することがあります。このような腫瘤が脳やその他の臓器に移動することで、致命的な結果を招くこともあります。

診断は、血液検査やPCR法によって行われます。治療には、プラジカンテルなどの駆虫薬が使用されますが、組織内に寄生する幼虫に対しては外科的摘出が有効です。予防のためには、生食を避けたり、猫の排泄物と接触することを控えたり、飲水時に煮沸や浄水処理を行うべきです。

まとめ

マンソン裂頭条虫は、感染症を引き起こす条虫であり、危険性はあるものの、適切な知識と予防策を講じることで、そのリスクを軽減することが可能です。

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