マンティオス

マンティオス（古希: Μάντιος, Mantios, 英: Mantius）は、古代ギリシア神話に登場する人物であり、特に予言者としての側面で知られます。彼の家系は、父から子へと予言の能力が受け継がれた、神話世界において特筆すべき一族でした。

マンティオスは、アルゴスの王であり、自身もまた高名な予言者であったメラムプースと、その妻イーピアナッサの間に生まれました。彼の兄弟にはアバースやアンティパテースがいました。予言者メラムプースは、幼い頃に蛇に助けられたことから鳥の言葉を理解する能力を得たとされ、この不思議な力こそが彼の予言の源泉であったと伝えられています。マンティオスも父の能力を受け継いだか、あるいは別の形で予言の術を身につけたと考えられます。

マンティオスにはポリュペイデースとクレイトスという二人の息子がいました。これらの息子たち、そしてさらにその子孫たちは、神話の記述において重要な役割を果たしています。特に、予言者としての才能は、マンティオスの家系を通じて代々受け継がれていったことが強調されています。

ギリシア文学の最高峰の一つとされるホメーロスの叙事詩『オデュッセイアー』では、マンティオスの息子たちに言及しています。まず、息子のクレイトスについて、ホメーロスは彼がその類まれなる美しさゆえに、明け方の光を司る女神エーオースに強く惹かれ、連れ去られてしまった出来事を語っています。これは神と人間の関わり、特に人間の卓越した特質が神の注意を引くという神話的モチーフを示す一例です。

もう一人の息子ポリュペイデースに関しては、ホメーロスは彼が予言者としての卓越した能力を持っていたことを強調しています。伝えられるところによれば、ポリュペイデースは太陽神アポローンから直接予言の術を授けられたとされます。さらにホメーロスは、かつて予言者として無類の存在であったアムピアラーオスが亡くなった後、ポリュペイデースこそが彼に代わって最も優れた予言者となったと記しています。これは、マンティオスの息子が、神々の恩寵を受け、当時の神話世界で最も権威ある予言者の地位を継承したことを示唆しています。

一方、古代ローマ時代に活動した地理学者パウサニアスは、その著書『ギリシア記』の中で、ホメーロスや他の伝承とは異なる系譜に関する見解を示しています。彼は、広くアンティパテース（マンティオスの兄弟）の息子とされているオイクレースを、実はマンティオスの息子であるとしています。

このパウサニアスの説を採用する場合、系譜は以下のように繋がります：メラムプース → マンティオス → オイクレース → アムピアラーオス。つまり、パウサニアスの見解によれば、高名な予言者として知られるアムピアラーオスは、マンティオスの直系の子孫ということになります。これは、ホメーロスがポリュペイデースをアムピアラーオスの後継者と位置づけていることとは別に、アムピアラーオスの血筋そのものがマンティオスにつながる可能性を示唆する重要な異説です。

マンティオス自身も予言者でしたが、彼の神話における役割は、自身の子孫に受け継がれた予言の才能と密接に関わっています。息子ポリュペイデースはホメーロスによってアムピアラーオスの後継者とされ、またパウサニアスはアムピアラーオス自身をマンティオスの子孫とする説を提示しています。これらの記述は、マンティオスが、予言者メラムプースから始まり、ポリュペイデースやアムピアラーオスといった偉大な予言者へと続く、神話上重要な予言者の一族の系譜における、中心的な人物の一人であったことを示しています。彼の物語は、神話における予言という力の継承と、それを巡る様々な伝承の存在を教えてくれます。

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