マント・ド・クール

マント・ド・クールとは

マント・ド・クール（フランス語：manteau de cour）は、フランスの宮廷において用いられた華やかな礼服を指します。この衣装は、威厳を象徴するために豪華な装飾が施された外套であり、特にルイ王朝の時代に多くの貴族たちに重宝されました。英語では「フルコートドレス」とも呼ばれています。

デザインと特徴

マント・ド・クールは、主に深紅または濃紫色のビロードで作られ、アーミン（ermine）という毛皮で縁取りがなされるのが特徴です。この衣装は、通常は袖のないデザインや、短い袖がついているドレスにトレーン（引き裾）が付けられています。特にトレーンの長さやお裾奉持を行う人数は、着用者の地位によって異なり、高位の女性ほど長大なトレーンを持つことが許されていました。

また、頭部には帽子をかぶらず、宝玉や羽毛が飾られることが一般的でした。さらに、頭からチュールをかけるスタイルも存在し、豪華さと品位を演出しました。アクセサリーとしては扇を持つことが一般的であり、全体として非常に優雅な印象を与える衣装です。

日本におけるマント・ド・クールの活用

日本では、明治時代の欧化政策に伴って、このマント・ド・クールが取り入れられるようになりました。特に、明治10年代の中頃から20年代初めにかけて導入されていきました。その際、政府が欧化政策を推進するために建設した鹿鳴館で舞踏会が開催され、高官や華族の女性たちが洋装としてマント・ド・クールを纏うようになりました。これにより、宮廷における公式な場での礼服として定められることとなりました。

明治19年（1886年）6月23日には、宮内大臣の内達によってこの衣装が皇族女性の大礼服として正式に規定されました。しかし、この制度は昭和22年（1947年）に廃止されることになります。それ以降、マント・ド・クールは使用されなくなり、ローブ・デコルテが公式な場における女性の正礼装として定着しました。

結論

マント・ド・クールは、フランスの宮廷文化を基にした豪華な礼服として、日本でも一時期特別な意味を持っていました。この衣装は、身分の象徴として多くの女性に愛され、時代の変化と共にその役割を終えることになりました。しかし、その美しさや華やかさは今もなお、歴史の一部として記憶されています。

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