マンドローネ

マンドローネとは

マンドローネは、マンドリン属の楽器の中で最も低い音域を担当します。しかし、その形状や演奏方法は、一般的なマンドリン属の楽器とは異なる特徴を持っています。

歴史

マンドローネは、少なくとも18世紀には存在していたことが確認されています。長い歴史の中で、調弦や構造にいくつかの変遷が見られます。

調弦

現在、広く使われているのは「高調マンドローネ」と呼ばれるもので、その調弦はA-D-G-Cです。これは、マンドロンチェロよりも低い音域で、ヴァイオリン属の最低音域楽器であるコントラバス（E-A-D-G）よりも高い音域です。そのため、オーケストラ曲をマンドローネで演奏する際には、コントラバスのパートをそのまま移すことができず、必要に応じて1オクターブ上げるなどの調整が必要です。

また、過去にはコントラバスと同じ調弦を持つ「低調マンドローネ」も存在し、そのための楽曲も作られました。さらに、イタリアのカラーチェ社によって、低調マンドローネに3本の単弦を加えた「アルチリュート」という楽器も製作されましたが、演奏者の少なさから普及しませんでした。マンドラの1オクターブ低い調弦（G-D-A-E）のマンドローネも存在したという記録があります。

楽譜は、コントラバスと同様に1オクターブ高く移調したヘ音譜表に記譜されることが一般的です。

演奏方法

マンドローネの演奏方法は、他のマンドリン属の楽器とは大きく異なります。楽器本体の下部にエンドピンを差し込み、右膝裏で支え、ネックをやや立てた状態で構えます。ピックは、他のマンドリン属の楽器と同様に鼈甲製を使用しますが、専用の厚さのものは存在せず、エレキギターなどに使われるピックを用いることが多いです。楽器の大きさから、他のマンドリン属の楽器とは異なる技術を要しますが、根本的な奏法は共通しています。

普及度

現在の日本のマンドリンオーケストラでは、最低音部はコントラバスが担当することが多いですが、コントラバスは擦弦楽器であるため、撥弦楽器であるマンドリン属の音色とは質感が異なります。そのため、両者の音色のギャップを埋める目的でマンドローネが用いられることがあります。特に、音の立ち上がりをカバーするのに有効です。

しかし、マンドローネの楽器自体の数が少ないため、マンドリンオーケストラに所属していても、実際に見たことがないという人も少なくありません。また、その希少性やマンドリン音楽に対する一般的な理解度の低さから、「不完全・不必要な楽器」と見なされることもあります。プロ奏者や指導者の不足、奏者が自己流で演奏技術を確立せざるを得ない状況など、複合的な要因が演奏技術の未熟さにつながり、誤った認識を持たれることもあります。マンドローネ奏者にとっては、そのような現状を打破し、楽器の正当な評価を得ることが大きな課題となっています。

アメリカのマンドリンオーケストラでは、マンドローネの代わりにマンドベースが用いられます。マンドベースはコントラバスと同じ調弦です。

参考文献

Sparks, Paul; The Classical Mandolin, Oxford University Press. ISBN 978-0-19517-337-6
Sterling Publishing Company, New York, Musical Instruments of the World, page 188, ISBN 978-0-80699-847-3

外部リンク

il mandolone
Shows the flat back of a mandolone
* Page that shows mandoloncelle and mandolone from side

もう一度検索