マンハッタン計画の年表

マンハッタン計画：原子爆弾開発の軌跡

第二次世界大戦下の1939年から1947年にかけて、アメリカ合衆国、イギリス連邦、そしてカナダは、人類の歴史を永遠に変えるプロジェクト、マンハッタン計画を推進しました。この計画は、原子爆弾の開発を目的とした極秘プロジェクトであり、その成功は世界に大きな衝撃を与えました。本稿では、マンハッタン計画の全貌を、主要な出来事を時系列で辿りながら解説します。

初期段階：懸念と研究の始まり (1939-1941)

1939年、レオ・シラードとアルバート・アインシュタインは、ナチス・ドイツによる原子爆弾開発の可能性を懸念し、フランクリン・D・ルーズベルト大統領に警告する手紙を送りました。この手紙は、アメリカにおける原子力研究の開始を促す重要な契機となりました。その後、ウラン諮問委員会が設立され、初期の研究が開始されました。

1940年には、イギリスでMAUD委員会が設立され、原子爆弾の実現可能性に関する研究が進められました。アメリカでも国防研究委員会（NDRC）が核分裂研究の指揮を執り、ガス拡散法や電磁濃縮法といったウラン濃縮技術の研究が着手されました。

1941年、プルトニウムの発見が確認され、原子爆弾開発の可能性がさらに高まりました。真珠湾攻撃と日米開戦により、マンハッタン計画は、国家の存亡をかけた緊急課題となりました。

計画の加速と主要拠点の設立 (1942-1943)

1942年、アメリカ陸軍工兵司令部はマンハッタン工兵管区(MED)を設立し、マンハッタン計画の運営を本格化させました。レスリー・グローヴス大佐が計画の指揮を執り、シカゴ大学では初の原子炉が臨界に達しました。

テネシー州オークリッジにはウラン濃縮工場、ニューメキシコ州ロスアラモスには科学研究所が建設され、世界中から集められた優秀な科学者たちが、日夜、原爆開発に邁進しました。特にロスアラモスは、J・ロバート・オッペンハイマーの指導の下、原爆設計の中心拠点となりました。この期間、イギリス人科学者チームもマンハッタン計画に参加しました。

開発の最終段階と実験 (1944-1945)

1944年には、プルトニウムを用いた爆弾開発で困難が判明し、爆縮方式による設計に切り替えられました。1945年5月、ナチス・ドイツの降伏によりヨーロッパでの戦争は終結しましたが、マンハッタン計画は継続されました。

7月16日、ニューメキシコ州アラモゴードで世界初の核実験、トリニティ実験が行われました。実験は成功し、計画は最終段階に入りました。

原爆投下と終戦 (1945年8月)

1945年8月6日、アメリカ軍はウラン型原子爆弾「リトルボーイ」を広島に投下しました。3日後の8月9日には、プルトニウム型原子爆弾「ファットマン」を長崎に投下しました。この原爆投下は、世界に大きな衝撃を与え、日本は降伏、第二次世界大戦は終結しました。

計画の終結とその後 (1946-1947)

1946年には、原子力に関する情報の国外流出を防ぐため、マクマホン法が制定されました。そして、1947年1月1日、マンハッタン計画はアメリカ原子力委員会に引き継がれ、その歴史に幕を閉じました。マンハッタン計画は、人類に未曽有の破壊力を持つ兵器をもたらした一方、原子力の平和利用への道も切り開きました。その功罪は、現在も議論が続いています。

参考文献

Richard Rhodes, The Making of the Atomic Bomb (Simon and Schuster: New York, 1986).
『原子爆弾の誕生』リチャード・ローズ著 神沼二真訳 渋谷泰一訳 1993年

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