マーク V 戦車

マーク V 戦車

マーク V 戦車（マーク 5せんしゃ）は、イギリスが第一次世界大戦中に開発した重戦車で、マーク I 戦車から始まるシリーズの最後の進化系であり、その性能を大幅に向上させたモデルです。1916年のソンムの戦いで初めて導入されたマーク I 戦車に続き、戦場での運用において蓄積された知見を基に、マーク IV 戦車の課題が改善されました。

開発の背景

マーク IV 戦車は塹壕を越える機能は高められたものの、最大速度が6 km/hと遅く、信頼性の問題が指摘されていました。これらの欠点を克服するために、1917年末にマーク V 戦車の設計が始まりました。アルバート・ジェラルド・スターン中佐を中心とする戦車供給委員会の監督の下、エンジンにリカード製の150 hpエンジンを搭載し、ウィルソンエピサイクリック変速機を採用しました。1918年には初のプロトタイプが完成し、同年5月から量産が開始されました。

主な仕様と特徴

マーク V 戦車は、総重量が28トンから29トンで、最大速度は約8 km/hです。菱形の車体デザインは、前部の鋭角が塹壕越えを容易にし、デザインの改善が施されました。また、エンジンを前方にオフセット配置することで、車両の重心が改善されており、乗員の居住環境も考慮されています。

武装には、主砲を搭載した雄型と機関銃のみの雌型の2種類があり、特に雌型はオチキス機関銃を装備しています。搭載された換気ファンによって、有毒ガスに対する耐性も高められていますが、換気の効率には限界がありました。加えて、乗員を8名に増やすことで操作性も向上しました。

さらに、マーク V 戦車からは大型尾輪が廃止され、後方に射撃能力を持つ機関銃が追加されるなどの改良も施されています。また、機動力を高めるリカードエンジンの採用により、駆動系も大きく進化しました。

使用と戦績

マーク V 戦車は、西部戦線での戦闘において、1918年7月のアメルの戦いで初めて投入され、その後アミアンの戦いでも使用されました。これらの戦闘では、高い突破能力を持つホイペット/マーク Vとの連携を行い、敵陣を突破する重要な役割を果たしました。この戦車は、ドイツの反戦車砲に苦戦しつつも、イギリス軍やアメリカ軍にとって大きな貢献をしました。

派生型と生産数

標準型のマーク V 戦車は雄型と雌型がそれぞれ200輌ずつ生産されましたが、派生型も含めると約600輌が生産され、市場に出回ることとなりました。特にマーク V型は車体を延長した改良版であり、579輌が生産されています。他にも性能向上を目指したマーク V型やマーク V*型が計画されましたが、実際には生産には至りませんでした。

保存と文化的影響

第一次世界大戦後、マーク V 戦車は大部分が廃棄されましたが、現在も約11輌が保存されており、この中にはロシア内戦での使用記録を持つものも含まれています。また、イギリスのボービントン戦車博物館にはジョンソン改修型がコレクションの一部として展示されています。さらにアニメやゲームなど、さまざまなメディアにも登場し、その影響力は現在においても色濃く残っています。

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