マーサ・バスコンセロス

マーサ・マリア・コルドイロ・バスコンセロス（Martha Maria Cordeiro Vasconcellos）は、1948年6月18日にブラジルで生まれた、輝かしい経歴を持つ女性です。特に、1968年のミス・ユニバース世界大会で優勝したことで知られています。

彼女は弁護士の父イヴォ・デ・サ・バスコンセロス氏と母イレーネ・バスコンセロス夫人の間に生まれました。1968年当時、バイーア州の州都サルヴァドールで小学校の読み書きを教えていたマーサは、当初、美人コンテストには関心を持っていませんでした。

しかし、母のいとこに勧められ、ミス・バイーアへの出場を決意します。ところが、父親がこれに強く反対し、出場自体が危ぶまれる事態となりました。それでも関係者の尽力により、無事に出場が叶い、1968年6月13日に見事優勝を果たしました。

バイーア州代表としてミス・ブラジル大会への出場権を得たマーサでしたが、父親の反対はミス・バイーア出場時よりも一層強固なものとなっていました。この時、バイーア州知事ロマン・ジュニオル氏の仲介により、ようやく出場が認められます。その際、州知事夫人の秘書が、決勝が行われるリオ・デ・ジャネイロまで付き添ったといいます。そして1968年6月29日、マーサはミス・ブラジル1968の栄冠に輝きました。ちなみに、この大会で3位だったマリア・ダ・グロリア・カルバーリョ氏は、同年のミス・インターナショナルで優勝を果たしています。

ミス・ユニバースへの挑戦に際しても、ブラジル国外への渡航に必要な書類への父親のサインを再び拒否されました。しかし、粘り強く説得を重ね、7月上旬にアメリカ合衆国フロリダ州マイアミビーチに到着しました。そして7月13日に開催された決勝で、ミスUSAのドロシー・アンステット氏らを抑え、見事にミス・ユニバース1968のタイトルを獲得しました。

彼女のユニークな特技は、地元記者たちの関心を集めました。それは、座っている時も、他の候補者にもたれかかっている時も、さらには立っている時ですら昼寝ができるという能力でした。ミス・ユニバースとして過ごした任期中、マーサは精力的に公務をこなしました。NASAへの訪問をはじめとする国内外への旅に加え、ローマ教皇パウロ6世への謁見も実現しました。

しかしながら、彼女の精神状態や振る舞いは、関係者の間で物議を醸すことになります。世界一に輝いた戴冠式の翌日の夜から、マーサは激しいホームシックと、12歳の頃から交際していたボーイフレンドへの募る思いに苦しみ、絶え間なく涙を流し続けたのです。

ミス・ユニバースとしての任期を終えると、マーサはブラジルへ帰国しました。帰国からわずか6日後、彼女は幼馴染であり、長年交際していたレイナルド・ロウレイロ氏と結婚しました。二人の子供をもうけました。その後、バイーア連邦大学に入学し心理学を学びますが、妊娠を機に学位取得は断念しました。

2000年以前に離婚を経験し、2000年にはアメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンへ移住しました。アメリカでは、ケンブリッジ大学で精神保健カウンセリングを深く学び、学士号と修士号を取得しました。また、女性に対する暴力と闘うための非営利組織（NGO）を立ち上げ、精力的に活動しました。その功績は高く評価され、複数の賞を受与されています。

社会的活動としては、ラテン・アメリカ・ヘルス・インスティテュートにて、HIV陽性と診断された人々のセラピストとして活動を開始しました。さらに、刑務所を出て社会復帰を目指す人々や、保護者による怠慢から家庭を離れて暮らす子供たちのためのセラピストとしても尽力しました。そして、あらゆる形態の暴力や性的虐待と闘うための活動にも深く関わりました。家庭内暴力や性的暴力に苦しむ女性たちを支援するウーマンズ・バー・ファンデーションなどから、その功績を称える賞が贈られています。また、ミラクル・ミッション賞も受賞しています。

アメリカで出会った文学教授のジョン・ライリー氏と再婚しましたが、夫ジョン氏の死後、マーサは故郷ブラジルへ戻り、現在もサルヴァドールで暮らしています。

彼女のミス・ユニバース優勝を受け、1968年にはサルヴァドール市長のアントニオ・カルロス・オソリオ氏が、市内に建設中だったトンネルにマーサの名前を冠すると発表する出来事もありました。2015年には、ジャーナリストのロベルト・マセド氏によって、彼女の半生を描いた伝記が出版されています。

マーサ・バスコンセロスは、美人コンテストの世界で頂点を極めた後も、学び直し、他者の支援に尽力するなど、波乱に満ちた人生を送った女性です。

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