マーシャリング (紋章学)

マーシャリング：紋章の統合と整理

マーシャリングは、紋章学において、複数の紋章を統合、配置変更、削除することで、紋章記述を整理する手法です。主に、2つの家系の婚姻、戦争や侵略、領土併合・分割といった歴史的出来事を反映して用いられます。

紋章の統合方法

紋章の統合には、主に以下の4つの方法があります。

1. ディミディエイション (Dimidiation): 2つの紋章をそれぞれ半分ずつ、左右に並べて統合する方法です。かつては一般的な手法でしたが、組み合わせによっては元の紋章が判別できなくなるため、次第に用いられなくなりました。

2. インペイルメント (Impalement): 2つの紋章を全体を左右に並べて統合する方法です。婚姻を意味する最も一般的な方法で、夫の紋章が左（デキスター）、妻の紋章が右（シニスター）に配置されます。婚姻以外でも、個人の紋章と職位の紋章を組み合わせる場合にも用いられます。

3. プリテンディング (Pretending): 妻が紋章の相続人である場合に用いられる方法です。夫の紋章に、妻の父（妻の家系）の紋章を小さな盾（エスカッシャン・オブ・プリテンス）として加えます。これは、妻の家系が途絶えるのを防ぐための措置です。エスカッシャン・オブ・プリテンスは、夫の紋章の中央（オナー・ポイント）に配置され、特別な意味を持ちます。妻が先に亡くなっても、夫の紋章に残ります。後妻がいる場合は、前妻の紋章と後妻の紋章が共に表示されます。

4. クォータリング (Quartering): 紋章を4分割し、各部分に異なる紋章を配置する方法です。家格の高い紋章を優先的に配置します。プリテンディングで加えられた紋章も、妻が亡くなった後、クォータリングで再配置される場合があります。分割数は4つに限りません。

女性の紋章

女性の紋章は通常、ロズンジ（ひし形）の形で描かれますが、結婚後は夫の紋章と同様にシールドに描かれます。

紋章の整理

統合された紋章は、以下の状況で整理されます。

妻が紋章の相続人でない場合、妻が先に亡くなると妻の紋章は取り除かれます。
妻が紋章の相続人で、先に亡くなり、後妻も相続人の場合は、前妻の紋章はクォータリングされ、後妻の紋章がエスカッシャン・オブ・プリテンスとして加えられます。
離婚の場合は、互いの紋章が取り除かれます。
紋章が複雑になりすぎると、家格の低い紋章から順に取り除かれます。ただし、保持者の意向で、取り除かれないこともあります。

まとめ

マーシャリングは、紋章の統合と整理を行う複雑な手法です。婚姻や相続だけでなく、歴史的背景も反映し、紋章の配置やデザインには厳格なルールが存在します。これにより、家系の歴史や地位を視覚的に表現しているのです。

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