マーシャル (アンプ)

マーシャル：ロックサウンドの象徴

マーシャル・アンプリフィケーション社が展開するマーシャルは、イギリスを代表するエレクトリックギターおよびベース用アンプブランドです。その名は、創業者であるジム・マーシャル氏に由来しています。ロンドンのイーリング地区で創業後、現在はバッキンガムシャー州ミルトン・キーンズに本社と工場を構えています。

幅広いラインナップと真空管サウンド

マーシャルは、プロミュージシャンからアマチュアまで幅広い層をターゲットに、様々な価格帯と用途のアンプを提供しています。特に、複数のアンプとスピーカーキャビネットを積み重ねた「スタックアンプ」は、マーシャルの代名詞と言えるでしょう。スタックアンプ以外にも、コンボアンプやエフェクターなども製造しています。

マーシャルアンプの特徴は、真空管を使用したことで生まれる暖かく、力強いディストーションサウンドにあります。高音と低音の伸びやかさと、豊かな中音域が特徴的で、大音量での演奏にも対応できるパワフルなサウンドは、多くのミュージシャンを魅了し続けています。

創業から成功への軌跡：ミュージシャンの声に応える

ジム・マーシャル氏は、戦後ロンドンのドラマー兼ボーカリストとして活動した後、ドラム教室を開きました。その教室には多くの生徒が集まり、彼らからの要望に応える形で、1960年に「マーシャル・ショップ」という小売店を開業します。当初はドラム専門でしたが、ロックミュージシャンからのアンプに関する要望が高まるにつれ、アンプの販売も開始しました。しかし、当時のアンプは故障が多く、修理対応に追われる毎日でした。そこで、ジム・マーシャル氏は自らより良いアンプを製作することを決意します。

1962年、フェンダー・ベースマンを参考に、最初の自社製アンプ「JTM45」を開発。その高い品質と個性的なサウンドは、瞬く間にミュージシャンたちの間で話題となりました。

その後、ロック音楽の大衆化とともに、アンプの大音量化、大型化が求められるようになりました。ザ・フーのピート・タウンゼントからの要望がきっかけとなり、マーシャルは独自のスタックアンプを開発します。タウンゼントの当初の要望は、100Wの超大型アンプと巨大なスピーカーキャビネットでしたが、その重量と運搬の困難さから、より実用的な2段または3段重ねのスタックアンプが誕生しました。このスタックアンプは「マーシャル・スタック」と呼ばれ、マーシャルのトレードマークとなりました。上段のアンプヘッド、中段の「Aキャビネット」、下段の「Bキャビネット」からなるこのデザインは、見た目だけでなく、音の拡散にも優れていました。

ジミ・ヘンドリックスとの出会い

ジミ・ヘンドリックス、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、リッチー・ブラックモアなど、多くの著名なミュージシャンがマーシャルアンプを使用しました。特にジミ・ヘンドリックスとのエピソードは有名です。ヘンドリックスはマーシャルショップに訪れ、将来スターになると宣言し、3台のアンプを購入しました。彼は無料での提供ではなく、ツアー先でのサポート体制を重視していました。

マーシャル・ウォールと世界的な成功

ステージ後方に設置されたマーシャルアンプの壁「マーシャル・ウォール」は、ロックバンドの象徴的な光景となり、マーシャルの存在感を一層高めました。ジム・マーシャル氏は、1984年に輸出産業への貢献で英国女王より表彰され、1985年にはハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに名を連ねました。2012年に88歳で逝去しました。

主要モデルと歴史

マーシャル社はJTM45、1959、1987、1962、Major、MV、JCM800、Silver Jubilee、JCM900、6100、JCM2000、JVM、Vintage Modernなど数々のアンプモデルをリリースし、各モデルは個性的なサウンドとデザインで多くのミュージシャンを魅了しています。これらのアンプは、ロック音楽の歴史において重要な役割を果たしました。

国際展開と日本のマーシャル

マーシャル社は1966年から15年間、Rose-Morris社と販売代理店契約を結びましたが、その高い価格設定は、Rose-Morris社による高マージンが原因でした。現在、日本での輸入代理店はヤマハミュージックジャパンが務めており、山口県にはマーシャル・ミュージアム・ジャパンも存在します。

マーシャルとロック文化

マーシャルアンプは、ロック音楽のサウンドに多大な影響を与えてきました。エディ・ヴァン・ヘイレンによる「ブラウンサウンド」や、映画『スパイナル・タップ』での「11まであるボリューム」といったエピソードは、マーシャルアンプの文化的な影響を示しています。

マーシャルは、単なるアンプメーカーではなく、ロック音楽の歴史と文化を語る上で欠かせない存在です。

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